I.TOON伊藤有壱監督の新作、『Blue Eyes - in HARBOR TALE -』が、ついに公開されました!

現在、国内上映の皮切り、ヨコハマトリエンナーレ2014の応援プログラムとして、横浜のシネマ・ジャック&ベティで上映中です。
画像: 『Blue Eyes - in HARBOR TALE -』のワンシーン

『Blue Eyes - in HARBOR TALE -』は、幻想的で美しい港の世界観と可愛らしい”レンガくん”で観客を魅了した前作『HARBOR TALE』のエピソード2。本作では、ビスクドールが主役を務めます。アニメーションやストーリーはもちろん、登場するアンティークな小道具も必見な作品です。

今回は、『Blue Eyes - in HARBOR TALE -』を製作したI.TOONにお邪魔し、監督伊藤有壱さんにお話を伺いました。
写真: 監督の伊藤有壱さん(I.TOON代表
NHK Eテレ プチプチ・アニメ『ニャッキ!』をはじめ、花王 キュキュットシリーズ』や、宇多田ヒカルMV『traveling』平井堅MV『キミはともだち』など、多岐に渡る数多くの有名作品を制作していらっしゃいます。


まずは、『Blue Eyes - in HARBOR TALE -』予告編をご覧下さい!

―― 新作のコンセプト、内容、見所などを教えてください。

伊藤: 新作の『Blue Eyes - in HARBOR TALE -は、『HARBOR TALEの一作目のエピソードを観た方が、その続きでありながらも独立したショートストーリーを体験していくという、大きな構成のもとに作られたエピソード2の短編です。

一作目では、人間の歴史の中で人々が築いてきたもの、そして、古くその寿命を終えていく百年を越えた道具や建造物、そこに、人間の意志とは別に意志や生命が宿って独立していくという、架空の生命体の誕生を謳い上げました。
二作目では、その生まれ出た、
人類のもうひとつの子どもとも呼べるべき存在たちが、実際には人間が中心と して存在する社会の中で、港街を舞台にどのように智恵を出して生きていくか、という、一作目の主人公とは別のキャラクターを主役に見立てた物語を作りました。

その中でコンセプトと言えるものは、キーワードで言えば「バー」です。「バー」というのは、グラスでお酒を一杯、二杯と飲む、または、港街で様々な船員や商人、住人たちが交わる場としての、文字通りの酒場のバーであり、お酒というキーワードを取り除いても、人が交わる場所、そのひとときの、交わる止まり木としての存在として、そのキーワードを作品のコンセプトにしています。

内容・見所については一言では言いにくいのですが、レンガを越える齢130以上のビスクドールが辿った生き様、それが短編映像の中で、様々な小道具とともに見所となっています。


写真: 撮影を終えてスタジオの一角で自分のカケラを見つめるレンガくん


写真: ため息が出るほど美しい撮影小道具たち

―― 実写の人物を登場させたのは、どのような意図からですか?

伊藤: HARBOR TALEの舞台は港街「Y」という、架空ながらも人間が主役で実際にまだ活動している町です。人間が登場するのは自然な成り行きであり、一作目では敢えて人間は遠景のエキストラとしてのみ、アニメーション表現で登場させました。今回は、その第二の存在たちと人間の接点を描くという大事な要素として、生身の人間を一名登場させました。

―― 今回使用した技術・ツール・ソフトウェア等を教えてください。

伊藤: HARBOR TALEの一作目から5年かかった中では、様々なカメラやソフトウェアなどが変化していきましたけれども、今回の二作目は、撮影にはデジタル一眼レフカメラのCANON EOS 5D MarkII、アニメーションの制作アシストソフトとしては、Dragonframe、PC環境としてはMacintoshで撮影を進行しました。最終的に、それらを映像として様々な要素と混在させていくネオクラフトアニメーションの主幹となるべき表現をするために、After Effects、Photoshopを多用しています。あともう一個、最終的な画面のカラーコレクションやトーンをつくる、仕上げていくためのフィニッシュのツールとしてSmokeを使っていますが、今回はWindows PC上で起動するSmokeですべての合成作業を終えています。

―― 人形の髪の毛やスカートのエアリーな動きが素晴らしく、見入ってしまいました…!

伊藤: エアリーという言葉は、面白い表現ですね。身長25センチほどのビスクドールが生きているように動くとき、その動きに応じて軽く一拍揺れて、髪の毛や洋服の裾が揺らぎます。その揺らぎは、自分から生きて動くものでない限り出ないものです。アニメーターによる髪の毛の「動かし」は極度の高度な技術ですが、そういった生命の要素として、それを視覚化する表現を多用しました。それが効果となっていることは、作者としても嬉しいことです。


写真:動かすことを前提に作られたにもかかわらず細部まで拘ったビスクドール

―― 今作の今後の展開をえてください。また、続編の制作予定はありますか?

伊藤: 今作Blue Eyes - in HARBOR TALE -は、モデルとなった横浜の地で映画館公開されます。「シネマ・ジャック&ベティ」という名画座での二週間公開です。また、映像展開のみならず、コンテンツ展開として、キーワードの「バー」をベースにした、「BAR HARBOR TALE プロジェクト」という港街横浜ならではのキャンペーンがスタートしています。これはビジネスというよりは、アートワークのあるべき展開の模索という目的がメインです。

続編について現在予定はありませんが、一作目から二作目へ、自然にアイディアが熟成してきたように、二作目を展開する中で生まれてくる港街ならではのショートストーリーのアイディアを、必要な時間をかけてショートアニメーション、もしくはフォトコミックなどの、アニメーション映像に限らない手法で展開ができたらと考えています。


写真:前作『ハーバーテイル』の絵本ハーバーテイル みなとのひとかけのレンガのはなし』(文溪堂)

―― tampen.jp読者のみなさんに一言お願いします。

伊藤: tampen.jpは素晴らしいサイトです。今まで多くの声が上がりながらも、ショートという一言では括れない幅広いジャンル、そして広い世代にわたるショートアニメーションクリエーター、研究者、教育者、鑑賞者たちの集う場として、すでに生き生きと輝いています。多くの人がこのtampen.jpを観ることで、そして参加することで、ショートアニメーションの理解を深め、ある人は作り手に転じ、ある人は読み手としての深さを磨いていければ、素晴らしいことだと思います。


画像: 『Blue Eyes - in HARBOR TALE -』のワンシーン

世界観やストーリーからアニメーション制作技術まで、全ての細部に渡りきちんと設計された、さすがのプロフェッショナル作品。今後のキャンペーン展開なども楽しみです。”港のバー”なんて、設定だけでもわくわくしてしまいますよね。
伊藤有壱さん、貴重なお話、どうもありがとうございました!

今回の上映は今月15日までですので、夏休みのこの機会をお見逃しなく!


『Blue Eyes - in HARBOR TALE -(ブルーアイズ イン ハーバーテイル)

製作: I.TOON Ltd.(アイトゥーン)(http://www.i-toon.org/
監督: 伊藤有壱

上映期間: 2014年8月2日~15日
上映館: シネマ・ジャック&ベティ(横浜)http://www.jackandbetty.net/

作品のコンセプトにちなんだ「BAR HARBOR TALEプロジェクト」をスタート!
公式ホームページ内の特設ページにて、
レンガくんが訪れたBAR店舗の情報を随時UPしています。
www.harbortale.com