はじめまして。久保雄太郎と申します。今回僕は、9月の16~21日までカナダの首都オタワで開催された、オタワ国際アニメーション映画祭(以下オタワ)に参加してきました。映画祭の雰囲気を僕の拙い文章と写真でお届けできたらと思います。

オタワは北米最大規模のアニメーション映画祭で、アヌシー、ザグレブ、広島と並び世界4大アニメーション映画祭と呼ばれ、今年で38回目の開催だったそうです。僕はこの映画祭が好きです。なぜなら、2年前に初めてノミネートした国際映画祭だからです。また、他の映画祭にも行くようになって、後々知ることになったのですが、学生に非常に優しいです。ホテルがいいんです。学生でも一般コンペの作家と同じホテルを準備してくれます。これが意外と無かったりします。(初日に写真を撮り忘れ、散らかった写真で申し訳ありません)

滞在費として、75ドルもくれます。そして、コンペの上映は学生部門の作品も、一般コンペやコミッション(依頼作品)などの作品と同じプログラムという珍しい形で上映されます。しかも高校生の制作した作品が短編コンペの一番最初に必ず流れます。

学生部門だから会場が少し小さい、お客さんが少ないなんてことは起きません。むしろ巨匠と同じプログラムだったりします。

これは、今回のメインキャラクターです。

フェスティバルディレクターはクリス・ロビンソンさんという方が務めており、一次選考をクリスさん一人で行うという少し珍しい映画祭です。真ん中の方がクリスさんです。左が同期で今回ノミネートされていた小野ハナさんです。そして右が久保です。

日本からは研究、執筆をされている評論家の土居さんも一緒に参加されていました。今回のオタワはこの3人の参加でした。

みんなバラバラに来ていたので、3人が揃ったのは初日のコンペの上映後でした。それまでは各自で行動していました。で、僕は日中にステーキを食べに行きました。

こんなお店です。

こんなステーキ

僕は、映画祭にきたら最初にステーキを食べることにしています。特に何でもないのですが、なんとなく決まりごとにしています。美味しいステーキでした。

その後長編コンペでエストニアの作品(Mait Laas監督『Lisa Limone and Maroc Orange: a Rapid Love Story)を見て、ようやく夜の短編コンペの時間になり、上映を見ました。

メイン会場のバイタウンシネマ。ザ・北米の映画館といった見た目です。

会場はその他にいくつかあって、ナショナル ギャラリーというところや

アーツコートという会場(編集注:映画祭本部があり、記者会見なども行われる)などがあり、いずれも15分以内に行き来ができます。

また、アーツコートではDVDや書籍、ポストカードやTシャツなどのグッズの販売が行われています。かなり品揃えが良く、ここでしか買えないDVDもあったりします。

更に、アーツコート内で今回ノミネートもしている、ケイレヴ・ウッドさん(平成24年度海外メディア芸術クリエイター招へい事業「アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京2012-2013」招へい者)と同じ学校だった仲間数人で、ライブペインティングを行っていました。4日間で完成させ最終的にアニメーションにするというもの。

短編コンペ1には今回映画祭には参加されていませんでしたが、作家の水江未来さんの『WONDERがノミネートしていました。とても好評だったようです。

日本ではあまり上映中に面白いシーンで笑ったり、「うぅ~」などリアクションしたりはしませんが、海外の映画祭では観客が素直に反応します。初めて体験した時はとても不思議でした。今回も、サクラかと思うほどにゲラゲラ笑う男性がいて、その人の笑いに笑ってしまうほどでした。

そして、上映後はオープニングパーティーです。

お酒はもちろん食べ物もあります。

ヤバそうな色のもあります。

みんなワイワイお酒を飲みながら話したり、途中からカラオケも始まったりしていました。こんな感じで映画祭期間中は毎日どこかでパーティーがやっています。

僕の上映はコンペ2だったので、2日目にありました。ただ見るだけなんですが、この時はやはり緊張します。自分の作品が上映された後、作家は名前が呼ばれスクリーンの前に行き手を振ったり、軽くお辞儀をしたりします。

この時が日頃の制作時とは異なり、唯一脚光を浴びる場です!

そして、僕の作品が終わりとうとう呼ばれます!

颯爽とスクリーンの前に行ったのですが、「Yutaro~ Kubo~!」と呼ばれるはずが、なぜか「Yoriko~ Mizushiri~!」と呼ばれ困惑しながら水尻さんとしてスクリーンの前に出て手を振りました。水尻さんも今回『かまくらがノミネートされていましたが、プログラムが違うのになぜ間違えられたのか、、、?同じコンペ2にノミネートされている、このtampen.jp編集長の久保亜美香さんと間違われるならまだ字面的に分かりますが、不思議な間違いでした。(YutaroとYorikoの並びを取り違えたんでしょうね・・・by編集長)

その時の残念な写真は今回撮影できなかったので、代わりに、上映された修了作品が1年間限定でarteのHPで視聴出来るので、よかったらご覧くだい!

http://creative.arte.tv/fr/labo/yutaro-kubo-0008-2014

また、スクリーンの前に出ると、こんな感じでスポットが当たります。

何はともあれ、作品自体は上映ミスなく上映されてよかったです。

上映の次の日にはQ&A(Meet the Filmmakers。監督インタビュー)が行われます。

こんな感じです!アンドレアス・ヒュカーデさんにミシェル・クロノワイエさんにウラディミール・ レスチョフさん!大御所揃いです!

向かいには観客がいて、クリスさん司会の元進行して行き、クリスさんが全員に質問した後観客からの質問がきます。一番左にいる少年はクリスさんのお子さんです。

この写真には写っていませんが、通訳を土居さんにしていただきました。土居さんのお陰でこちらも無事終了。

ホッとしてたら、一人のカナダの女の子が日本語で話しかけて来て、何やら日本の美大を受けようとしている高校生みたいでした。僕はQ&Aで「Yes」しか言ってないのに、彼女は僕の英語が上手だと言ってくれて、建前というのが分かってるんだな~と関心しました。

オタワには恒例行事の一つに、映画祭関係者みんなで行くピクニックがあります。

バスに乗って十数分でしょうか、そこにとっても大きな公園があります。

僕らもバスで行く予定だったのですが、バスがいっぱいだから歩いて行こうと、海外の作家に誘われ、一緒に歩いて行きました。歩くと30分くらいで公園まで着き、丁度よい距離にありました。

公園では、でっかいテントが建ててあります。

中はこんな感じでご飯が準備されていて、

お酒もあります。

脳みそのケーキ。

とても良い場所で、側には大きな湖?川?ちょっと分からないですが、水面が広がっています。
(編集注:Rideau川です。

ただミツバチが大量にいてめちゃくちゃ近づいてきます。

土居さんが僕の鼻に入る瞬間を激写してくれました。

そしてこのピクニックの大きな目的が、カボチャを彫ることです。

全員参加ではなく、彫りたい人だけ彫って残りの人は完成を楽しみにお酒飲んでます。

完成したのが、こんな感じです。

なかなかすごいのもあります。

そして、最後はグランプリを決めます。他にもいくつか賞があったみたいですが、商品はよく分からない玩具や木の枝などをクリスさんが渡していました。枝をもらった人もすごく喜んでいました。

さて、毎日上映とパーティーを繰り返し、とうとう授賞式!授賞式は最終日の一日前に行われました。

授賞式の会場は教会で、おそらく現在は教会としては使われていないようでした。
(編集注:会場は「The Saint Brigid's Centre For The Arts」、元はSt. Brigid'sカトリック教会だったが2007年に売りに出され、現在は芸術文化センターとして利用されている。

そして、緊張しながら待っていると、なんと!東京藝術大学(朱彦潼、キム・イェオン、久保雄太郎、小野ハナ、川上彩穂)が学校ショーリールの部門でHonorable Mention(佳作)を受賞しましたー!学校のみんなを代表して小野ハナさんと一緒にステージへ。

ただ、まだ書状が出来上がってないということで、その時もらったのは白紙でした!

まぁ、それでもやったね~と喜んでるのもつかの間、次は小野ハナさんの「澱みの騒ぎ」が卒業制作部門でHonorable Mention(佳作)を受賞!おめでとうございます!

二人でただの白い紙を持って記念撮影!

発表の後は会場でまたもやパーティーです。そして土居さんからビールをごちそうになりました!

デイヴィド・オライリーさんとも写真を撮りました~

パーティーの途中にアートナイトが行われているということで、そちらの方にも行ってみました。

一通り見て、帰りにビーバーテールという揚げパンのような、シナモンの効いた名物お菓子を買って授賞式を終えました。

最終日は、上映を少しだけ見て3人でプーティンというカナダのソウルフードを食べに行きました。

大量のポテトにこれでもかとグレイビーソースとチーズがかかった食べ物です。美味しいですが、一人で一皿は結構大変で、なかなかジャンキーな食べ物です。

最終日はクロージングパーティーがあるのですが、最初からいてもあまり人が時間ぴったりには来ないということで、3人でホテルに戻り、ジャパンパーティーを行いました!ワインとチーズで楽しんだ後、パーティー会場へ行き、最後のパーティーを楽しみました。

ダンスを始めたり。

ケーキも出ました。

そして、今回の映画祭の〆として、3人でカップ麺のフォーを買って出汁の偉大さを感じ今回のオタワが無事終了しました。

僕は、映画祭の次の日にモントリオールにあるNFB(National Film Board of Canada/カナダ国立映画制作庁)のオープンスタジオへ行きました。毎年オタワの次の日に開催され、この日はNFBの方が中を案内してくれます。2年前はそのことを知らずに帰ってしまったので、念願のNFBです。ただ、一人で行かなくてはいけません。海外で一人で電車、バスなどで移動したことが無かったため、辿り着けるか不安な旅でした。行き方としては、電車かバスです。最初電車を使おうと朝タクシーで駅に行ったのですが、まさかの3時間半に1本という本数で、1つ逃してしまい一旦固まっていました。あまりに固まってしまい、駅の写真を撮影し忘れる程でした。

その後バスターミナルへ移動するとバスであれば、グレイハウンドという長距離バスが1時間に1本走っているとの事でした。一先ず安心して、ターミナル内で朝食を取りました。マッシュルームのスープのようでしたが、美味しくはなかったです。

無事バスに乗って出発し、2時間くらいでモントリオールに着くとのこと、しかし、停車駅がいくつかある事に途中で気付き、いったい自分が今どこにいるのか分からないままビクビクしていると、空港に止まるようだったので、ここしかない!と思って降りました。モントリオール空港で間違いなく、そこの近くにホテルを取っていたので、とりあえずホテルにチェックインしました。

トイレのライティングが絶対におかしかった。。。

NFBも空港からタクシーで15分くらいのところにあるということだったので、ホテルからタクシーを使いました。土居さんの話によると、タクシーの運転手さんも迷う事があるとのことだったので、若干不安がありましたが、すんなりNFBに届けてもらえました。

そして、これがNFBです!

感動しました~NFBに来れた事、そして一人で来れたということに。

中に入ると警備の方がいて、そこで名前を書いて受付を済ませました。

中に入ってすぐこんなのがあります。

少し待つと上の食堂に案内されました。今回オープンスタジオに参加される人が既にご飯を食べたりして待っていました。

程なくして、10人くらいのチームに分けられツアーがスタートしました。現在制作している作品やNFBの若手育成プログラム「ホットハウス」で制作中の作品の過程見学することができました。

その他にも建物のいたる所にNFBで制作された作品の原画などが数多く展示されていました。また、テオドール・ウシェフさんやクリス・ランドレスさんがいたりと、とてもワクワクしました!写真は撮影していいのか分からず、残念ながらお見せできるものがありませんが、とても貴重なものでした。

ツアーが終わると、最後は上映があり、ホットハウスの作品などの上映がありました。そして上映の合間に外に準備されたカップケーキを食べて休憩という流れでした。

上映も終わり最後にどうしても見ておきたかったライアン・ラーキンさんの原画を探したのですが見つからず、NFBの方にも聞いて一緒に探していただいたのですが、ちょっと今どこにあるか分からないと言われ残念ながら一番見たかったものは見られませんでした。ですが、また来なくては!と思えました。次はツアーじゃなくて、制作者として行けるように頑張りたいと思います。

長々とレポートしましたが、お付き合いいただきありがとうございます。最後に、オタワの今年の感想をいうと、僕はセレクションがとても良かったように思いました。今年はゾンビ系の作品が偏ってセレクションされていたりせず、アヌシー、ザグレブで見なかった面白い作品にも出会えました。加えて、高校生の作品のクオリティーがびっくりするくらい高かったです。2012年に見た時と比べるとかなりの差があったように思います。

また、オタワの観客のはっきりとしたリアクションもあってか、作品を楽しんでみたな~というのを強く感じました。

これを読んで自分も映画祭に出してみようかな?なんて思っていただけたらと思います。映画祭だけが作品の発表の場ではないですが、せっかく作ったら誰かに見てもらいたくなりますよね。先日行われたICAF【関連記事:ICAF2014東京本大会がいよいよ今月スタート! | http://tampen.jp/article/276 などでも毎年いろんな学校から面白い作品がたくさん出てると思います。作品出すのはお金もかからない映画祭がほとんどだし、せっかくなので、出してみるってのはどうでしょうか!?僕も次の作品からは一般コンペ。良い作品が発表出来ればと思います。

(写真提供: 小野ハナ、土居伸彰)


OTTWA INTERNATIONAL ANIMATION FESTIVAL(OIAF)
https://www.animationfestival.ca/

久保雄太郎(vimeo)
https://vimeo.com/yutarokubo