何層にも重なって見えてゆくようなMVです。cokiyuの『Your Thorn』やメグとパトロンの『パリパリパーリー』MV、またオリジナル作品では『CHANNELER』、『こうこう』。そして数々のVJ活動で知られ、SNSでは黄色いパンダの画像でおなじみの、モーションデザイナーである大橋史さんの新作が各動画サイトにて公開されました。
今作は、4人組音楽ユニットで、メジャーリリースではTVアニメの主題歌を次々と担当しているfhánaのミュージックビデオ。しかしタイアップがついた新曲ではなく、fhánaが結成後最初に制作したというオリジナル楽曲「kotonoha breakdown」のMVとなっています。
イラストレーターのゆずささんによる可愛らしいキャラクターたちと、次々と色彩鮮やかに変化してゆくグラフィック。そして緻密に設計されたタイポグラフィが実に心地よく、何度繰り返して観てもうっとりするような作品に仕上がっています。まだ観ていない皆様、ぜひまずはプレイ、プレイ!
……と、繰り返し観てゆくうちに、「おや?」と気がついて来ることがあります。ヴォーカルのtowanaさんが歌い上げる歌詞、文字化けした言葉にキャラクターたちが迷い込んでゆく後半のシーケンス……。
それを読み解くカギになるかもしれません。『tampen.jp』の今回の記事のために、大橋史さんがコメントを寄せて下さりました!
大橋史:
2011年3月11日以降に起きた一連の震災や事故によって変わってしまったSNS上でのコミュニケーションの姿をテーマにした楽曲とMVです。
twitterのようなタイピングするコミュニケーションに没頭する人達の心理状態をモーショングラフィックスで表現しています。
fhánaの明るくも切ない楽曲と、ゆずさデザインによる多様なキャラクターにも注目してもらえると嬉しいです。
大橋史さん、ありがとうございました!
実は、こちらの『kotonoha breakdown』が公開されたのは、今年の3月11日夜。長い準備期間を経て制作されたこのMVには、そんなテーマが込められているのです。
詳しくはfhánaのブログ(「郵便空間に放たれたこの曲が、誤配の果てに希望の歌となることを願って」)、そして大橋史さんの制作ノートをチェケラッチョ。決して直接的に震災や、現状のSNSに対する風刺・批判が含まれているわけではありません。しかし描かれている物語は、確かに私たちが日常感じつつある、SNSの向こうがわの、脆くて、儚いコミュニケーションの姿です。
ノイズの向こう側へ手を伸ばしても、届くかは分からない――。悲しくも包み込むような音楽と歌声、詩、そして愁いを残しながらもポップに、そして心地よく描かれたアニメーションがとても印象的な、まるで何層にも色が重ねられたようなMVであると言えるでしょう。
fhánaの新作は、2014年春期大注目のテレビアニメ『僕らはみんな河合荘』(原作面白いです!)の主題歌に決定。また、大橋史さんの2014年最新ショウリール『OVERLAP 2014』も、vimeoにて公開中です。もしこの作品を気に入られたり、何か感じることがあったのならば……。ネットの空間にコトバとして、あなたの色を重ね合わせるように、何か書き込んでみてもよいかもしれませんね(動画リンクも、忘れずに!)。
大橋史
http://takashiohashi.com/
大橋史「kotonoha breakdown」制作ノート
http://ohashitakashi.blogspot.jp/2014/03/fhana-kotonoha-breakdown.html
fhána
http://fhana.jp/
郵便空間に放たれたこの曲が、誤配の果てに希望の歌となることを願って
http://fhana.jp/blog/jsato/2014/03/11/