今月11日(木・祝)から開催中の第8回恵比寿映像祭内で13日(土)・17日(水)に予定されている短編アニメーション特集プログラム「荒れ地の先へ─短編アニメーション」で、若林萌さんのグラデュエーション作品『眠れぬ夜の流れ星』が上映されます。

昨年5月に開催された第27回東京学生映画祭アニメーション部門で準グランプリ、ASK?映像コンペティション2015では大賞を受賞した本作は、個性豊かで奇妙なキャラクターたちの日常生活と彼らの一大事が、独特の線画により完成された物語として描かれているのが魅力的な作品です。

絵本のページをめくるようなリズム感に引き込まれ観入っていると、住人になって”事件”に参加したくなってしまう・・・そんな『眠れぬ夜の流れ星』の世界観は、一体どのように紡ぎ出されたのでしょうか。今回は、監督の若林萌さんにお話を伺いました。


画像: 『眠れぬ夜の流れ星』の1シーン

―― まずは簡単な自己紹介をお願いします!

若林: 若林萌と申します!2015年の3月に多摩美術大学の映像演劇学科を卒業しました。アニメーション制作は大学の3年次から始めており、他にもイラストや舞台美術などを制作してきました。

―― 『眠れぬ夜の流れ星』について教えてください。どのような作品ですか?

若林: この作品は、大学の卒業制作として作ったものです。8分間のモノクロのアニメーションで、淡々と読み上げるようなナレーションで物語が展開していきます。

―― ストーリーについて教えてください。オリジナルのシナリオだそうですが、どのように生まれたのでしょう

若林: 夜がなくなった眩しい街に、流れ星の雨が降り、眠れない雄鶏が眠ろうとする物語です。
この話を考えたきっかけですが、「ここではない何処か」の「おとぎ話」を書きたいと思ったことが出発点になりました。日々描き溜めた落書きから膨らませ、描きたいシーンが生まれ、繋ぎ合わせ、ひとつの物語になりました。また、絵本のような語り口が好きなので、声に出して読んで心地よい言葉、使ってみたい言葉などもストーリー作りの大きな要素になったと思います。


画像: 『眠れぬ夜の流れ星』の1シーン、雄鶏のトビー

―― 要の部分で登場する「大男」とはどのようなキャラクターですか?

若林: 暗闇のなかでは怖くて眠れない、子供のようなキャラクターです。眩しいなかでは眠れないトビーと真逆の悩みを持っています。いつまでも明かりを点けたままにするわけにはいかないですし、トビーの願いを叶えるには大男に成長してもらわなければなりません。


画像: 『眠れぬ夜の流れ星』の1シーン、大男とトビー

―― 独特なビジュアルがステキですね!登場するどのキャラクターも奇妙で魅力的ですが、デザインについて教えてください。

若林: ありがとうございます!普段から絵はモノクロで描いていて、落書きがそのままアニメーションの作品になっていった感じです。可愛いものが好きで憧れているけれど可愛くはなりきれない、その代わりに不気味さ、気持ち悪さ、毒気といったものを詰め込んだ、そんなキャラクターを日頃から描いています。





画像: 普段の落書きたち

―― 本作の制作期間や使用したツール・ソフトウェアを教えてください。卒業作品ながら8分という大作ですが、どのように制作されたのでしょうか?

若林: この作品は構想に約半年、作画などに約半年、合計一年間かけて制作したものです。ナレーションは友人に依頼しましたが、あとはひとりで制作しました。作画はPhotoshopで一枚一枚描き、編集はAdobe Premiereを使用しました。作画の際、キャラクターの動き一枚一枚に細かい影を付けていったのですが、とても膨大な作業で制作中は黙々と机に向かう日々でした。その後、最後に外に出たときは晩秋だったのに完成し提出する頃には真冬になっていて驚きのあまり風邪をひいたり、数ヶ月ぶりにテレビを付けたら知らない芸人さんが一世を風靡し新たな流行語が生まれていたり、制作中あまりにも一緒に遊ばなかったせいか飼い犬がしばらく懐かなくなってしまったのも思い出深いです。浦島太郎みたいな体験をしました。





画像: 『眠れぬ夜の流れ星』メイキング

―― 本作の今後の展開予定を教えてください。

若林: 2016年3月19日(土)に調布市せんがわ劇場にて開催される19th CHOFU SHORT FILM COMPETITIONのAプログラムにて、本作眠れぬ夜の流れ星』が上映されます。また、昨年京橋のart space kimura ASK?にて開催された、ASK?映像祭2015で賞を頂き、今年の映像祭で展示をさせて頂くことになりました!この作品のイメージスケッチ、原稿やイラスト作品を展示する予定です。日程などの詳細はまた改めて私のtwitterなどでお知らせいたします!

―― 恵比寿映像祭で『眠れぬ夜の流れ星』をご覧になる方にメッセージをお願いします

若林: 皆さまに見て頂けるのを、どきどきわくわく心待ちにしております。13日の回には同じプログラムで上映される小野ハナさんとトークをさせていただくので頑張ります。足を運んでいただけたら嬉しいです!


画像: 『眠れぬ夜の流れ星』の1シーン

若林萌さん、どうもありがとうございました。

本作に溢れ出す魅力の源泉は、学生時代という時間をフルに活かし注ぎ込まれた若林さんの熱意にあったのですね。

ふとしたきっかけから生まれた少しの衝動と決意は、やがて熱を増し、彼らの日常を劇的に変え、光溢れる夜、そして、素晴らしい朝をもたらします。
『眠れぬ夜の流れ星』の、丁寧ながらもエネルギッシュな8分間、第8回恵比寿映像祭で、ご堪能ください!


若林萌
twitter: https://twitter.com/pez084
tumblr: http://chanmooooe.tumblr.com/


第8回恵比寿映像祭 動いている庭
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2016
Garden in Movement
http://www.yebizo.com/

会期: 平成28年2月11日(木・祝)~2月20日(土)
      [10日間・会期中無休]
開催時間: 10:00~20:00
※ただし最終日平成28(2016)年2月20日(土)のみ18:00まで

「荒れ地の先へ─短編アニメーション」
会場: 恵比寿ガーデンシネマ
日時: 2月13日(土)18:30、2月17日(水)15:00