フリーランスアニメーションディレクターの大川原亮と申します。

この度、"KAKEHASHI Project -The Bridge for Tomorrow-"という文化交流事業でアメリカ合衆国のニューヨークとサンフランシスコへ行き、アニメーションにまつわるスタジオやイベントの視察を行ってきました。"KAKEHASHI Project -The Bridge for Tomorrow-"とは政府(外務省)が推進する、北米地域との青少年交流の一環で、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)が実施しているプロジェクトです。青少年以外にも、大学生、社会人の様々な分野で交流を行っていますが、今回はそのうちのひとつ、それも「アニメーション」という限定された分野での派遣事業でした。

参加者は大川原亮、銀木沙織、鈴木亜矢、立川譲、村本咲(五十音順)で、それぞれ将来有望な若手かつ日本のアニメーション文化の発信に適しているという条件のもと、分野の有識者からの推薦に基づき、国際交流基金にて選定されました。国際交流基金による主催派遣形式により、派遣が実施されました(一部参加者自己負担あり)。また、現地ではエスコート通訳として常に行動を補佐してくださるスタッフの方がいらっしゃいました。移動は専用のバスを使用するため、必要なのはお土産代と、予算を超えた食費くらいなものです。その為、なんのストレスも無く、文化交流や視察に集中する事ができました。

ではここから僕の主観と写真を交えながら派遣事業の報告させて頂こうと思います。

「初日」
12時間以上のフライトを終えてニューアーク空港にてピックアップ。ブルックリンのホテルまで移動です。
マンハッタンの町並みがとてもキレイでした。

「二日目」
Blue Sky Studiosを訪問しました。
http://blueskystudios.com/

主な作品は『アイス・エイジ、『ロボッツ。来年には新作の『Peanuts』(スヌーピー)の公開を控えているとても大きなスタジオです。
Blue Sky Studiosでは主に3DCGアニメーションのワークフローについてスタジオツアーをしながらレクチャーを受けました。見学の際目についたのは、アニメーターの多くが自分のブースを大きく改造し、制作環境を整えてるといこと。整えるというより、仕事を楽しむ為の環境作りかもしれません。ある人はツリーハウスをイメージしてカスタマイズ、またある人はスヌーピーの小屋を建築してしまったりと、とてもユニークな風習がありました。

アニメーターはタダでさえストレスフルな仕事ですから、スタジオもそういった事に寛容なのかもしれません。残念ながらスタジオ内の撮影は禁止だったのですが、その完成度は目を見張るものがありました。その様子の一部がオフィシャルブログに少し載っていました。
http://blueskystudios.com/blog/entry/cubicle-month-original-tree-house/

その日の午後。
Titmouse Animation Studioを訪問しました。
http://titmouse.net/

参加者/左から鈴木亜矢さん、立川譲さん、大川原亮、村本咲(上)、銀木沙織(下)

Titmouse Animation Studioはニューヨークの中心部にあり、主にテレビシリーズのアニメーションを制作しています。こちらもスタジオ内は撮影禁止でしたが、Adobe Flashを使用しての制作が目立ちました。シンボルやトゥイーンアニメーションを使用し、より効率よく制作するワークフローが確立されていました。そんな中、手描きのテレビシリーズもいくつかあり、その中でも『SUPER JAIL!や『King Star Kingといった作品が、アメリカらしい感性と一風変わったキャラクター造形で印象に残りました。

[adult swim]というアメリカのケーブルテレビチャンネルで放映されているシリーズで、オンラインでも視聴できる様です。

※注)少々過激な内容が含まれます。
『SUPER JAIL!
http://www.adultswim.com/videos/superjail/

『King Star King
http://www.adultswim.com/videos/king-star-king/

「三日目」
ニューヨーク近代美術館訪問。ここは良く知られているので割愛します。

その後、NYコミコン(New York Comic Con)視察です。
すごい数の人間!それも皆さん結構本気でコスプレしていて、それを眺めているだけでも結構面白かったです。

翌日にパネルとして出演する事になっていて、その際にゲストスピーカーとして一緒に登壇して下さるNatasha Allegriさんのパネルを観にいきました。

ナターシャさんは『Bee & PuppycatというYouTube向けのアニメシリーズの原案やキャラクターデザイン等を担当している方です。とても若い女性なのですが、凄い人気で、一挙手一投足に「ヒューヒュー!」と歓声が上がる程の人気を博していらっしゃいました。(ナターシャさんは社会人交流事業の米国側のクリエーターとして来年の3月に来日し、東京アニメアワード2015で作品上映を予定しているそうです。)

『Bee & Puppycat
https://www.youtube.com/watch?v=XoKGhce5-08

Natasha Allegriさんのtumblr
http://natazilla.tumblr.com/

後に彼女の所属スタジオに訪問し一緒に写真を撮らせて頂きました。スタジオについて詳細は後述します。

僕の新作プロモーション用のステッカーをスマートフォンに貼ってもらえて嬉しかったです。

「四日目」
NYコミコンでKAKEHASHIプロジェクトのパネルが行われました。

モデレーターはJustin Leachさん。最初に訪問したBlue Sky Studiosのプロデューサーで、今回のニューヨーク訪問のプログラムについて多くのアドバイスをくださった方です。訪問するスタジオの採択にも助言をくださったそうです。
ゲストスピーカーにはナターシャさんが来て下さいました。国際交流基金のみなさんの尽力もあり300人を超える観客の方の前でそれぞれ作品等のショウリールを上映し、50分程のトークは成功を納めました。終了後サインを求められるなんて事もありました。

お客さんは日本のアニメも大好きで、立川さんの作品や鈴木さんが参加された作品は多くの方が知っている様子でした。そんな中で僕や、村本さん、銀木さんがインディペンデント・アニメーションの様々な表現方法を紹介できた事は、とても有意義な事だったと思います。

その後Museum of Moving Imageという美術館に行きました。
http://www.movingimage.us/

ここは動画のアート、歴史、技術に特化した唯一の美術館だそうです。アニメーションのオプティカル・トイやキネトスコープなどが展示されており、コマ撮りを体験できるワークショップのブース等もありました。また、映画で使用された特殊美術(映画『エレファント・マンの頭部模型、映画『マスクの緑色のマスク)等の展示もありました。特別展にはビル・プリンプトンの回顧展があり作品上映されていました。もしニューヨークに行かれる方でアニメーションや映画に興味がある人は、是非行ってみて下さい。おすすめできます。

「五日目」
Frederator Studios訪問。
http://frederator.com/

先述した通りナターシャさんが所属しているスタジオでもあります。

このスタジオはテレビ、映画、インターネット向けのアニメーションを制作しています。『Adventure Time等はとても人気のある作品です。(アメリカのアニメで一番勢いがあるという声も聞きました。)YouTubeで公式配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=WVT9_-i5Kp4

このスタジオの特徴としてはYouTubeを利用したプロモーションに力を入れている事。Cannel Frederator Networkという自社のチャンネルをもっており、そこに誰でも作品を掲載する事が出来るようになっている様です。その中から人気のある物やプロデューサーが可能性を感じたものを選定して、それに対して制作の為のバジェットを出す事もあるそうです。とても革新的なスタイルをもったスタジオでした。

スタジオの紹介をして頂き、こちらのプレゼンテーションをした後に短いインタビューを受けました。後ろに沢山転がっているのが、大人気のPuppycatです。

それにしてもオシャレなオフィスでした。

そんな大きな物をもらっちゃて、帰りどうするんですか。嬉しそうな銀木さんと村本さん。

「六日目」
サンフランシスコに移動しました。
Pixar Animation Studiosを訪問しました。
http://www.pixar.com/

Pixarは言わずと知れた映像制作会社ですね。『モンスターズ・インクや『トイ・ストーリーなど3DCGを用いた映画を多く産出しています。あのPixarに行けるなんて、めったにこんな機会は無いのでとても楽しみにしていました。

庭にはサッカーコート、プール等も完備されており、図書館があり、食事もできるカフェが二軒あるそうです。周辺にPixar専用のWiFiが飛んでいるのか確認した所。ありました。「PixAir」です。

今回ホストとして受け入れて下さったのがErick Ohさん。『モンスターズ・ユニバーシティや『カーズ2に携わったアニメーターです。一般では入れないスタジオ内のツアー等を行って頂きました。(エリックさんもナターシャさんと同じく社会人交流事業の米国側のクリエーターとして来年の3月に来日し、東京アニメアワード2015で作品上映を予定しているそうです。)

Eric Oh HP
http://www.erickoh.com/about_me.html

スタジオ内に入るとこの様な吹き抜けの広いスペースが広がっていました。

エントランス入って直ぐの所には、夥しい数のオスカー像がずらりと肩を並べていました。壮観です。

モンスターズインクのサリーが居て、大きくてふかふかだったので、一瞬ディズニーランドに居る様な気分になってしまい少しはしゃいでしまいました。

実際の作業スペースは守秘義務がある為撮影する事が出来ませんでしたが、Blue Sky Studios同様、各々がブースをカスタマイズしており、日本の居酒屋風の部屋や、カールおじさんの空飛ぶ家で作業している方も居ました。ある作業場にはバーがあり、お酒が並んでいました。金曜日の夜に開店するらしいです。自分たちでそこまで作ってしまうユーモアと自由さが印象に残りました。

見学を終えた後、Pixar Animation Studios内でも指折りのアニメーターと言われる4人の方々を交えてディスカッションの時間がありました。それぞれどの様なバックグラウンドを持っているのか、アニメーションを作る際にどのような意識で取り組んでいるか、モチベーションを保つ為にどの様な取り組みをしているか等、たくさんのお話を聞くことができました。因に制作環境がとても良いらしく、アニメーターが時間外で始業を強いられる事は殆どないらしいです。どんなに公開時期が迫っていても、定時で帰れて、土日に仕事する事は無いと断言していました。羨ましい限りです。

最後に記念撮影。Pixar Animation Studiosの皆さんありがとうございました。

最後は Industrial Light & Magic を訪問しました。
http://www.ilm.com/

ルーカス・フィルムが所有する有名なスタジオです。特殊効果、VFXを行っており『スター・ウォーズ、『E.T.、『バック・トゥ・ザ・フューチャー、『ジュラシック・パークなど、映画史に残る名作を多数制作しています。

入り口で早速ヨーダがお出迎えしてくれました。

エントランスをくぐると、馴染みのある”あの名作”のキャラクターが沢山あり、ついつい笑顔がこぼれてしまいます。

ここでは博物館見学のように、名作にまつわるセットや絵、人形等をみてまわりました。せっかく撮影の許可がおりたので画像多めでお送り致します。

スタジオツアーではVFXの世界の変換期でもある『ジュラシック・パークのお話もして頂きました。個人的にもすごく好きな作品なので、とても興味深く伺いました。

興味しんしん。

昼食をとりながら、自社のVFXが最先端を行く為に日々どのような研究をなさっているか、というお話を伺いました。ここでは話のスケールの大きさにただただお話を聞く事に終始してしまいましたが、僕にとってはそれがとても有意義な時間でした。

最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。
以上が今回のKAKEHASHIプロジェクトの全容です。かなり過密なスケジュールで多くのスタジオや美術館を訪問しましたので、レポートもかなり駆け足に成ってしまいました。しかし、今回普通では入れない様なスタジオに行かせて頂き、非常に良い経験をさせて頂きました。

アメリカの文化と日本の文化は違いますから生まれる作品も全然違います。アメリカではまだまだ「子供の為の物」とカテゴライズされているアニメですが、日本は随分前から大人も楽しむ娯楽として浸透しています。

一方で、今回訪問したスタジオではアニメーターは環境に満足している様でした。日本のように、低賃金で寝る間を惜しんで作画をするアニメーターとは随分印象が違いました。お互いに良い所がありますし、悪しき所もあります。しかし今回のような事がきっかけで、もっと盛んに業界内の交流が増進すれば、お互いが影響を受け合って、アニメーションのあり方という物が変わってくるかもしれません。

そしてKAKEHASHIプロジェクトの社会人派遣の歴史は浅く、これから先つづくかどうか分からないそうです。今回の参加者としては、社会人の文化交流も得るものが大きいと感じました。是非、今後とも続けて頂きたいと強く思います。

最後に、この様な機会を頂けた事と、今回の事業に従事してくださった方々に感謝気持ちを述べて閉めたいと思います。本当にありがとうございました。


国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
http://www.jpf.go.jp/j/index.html

"KAKEHASHI Project -The Bridge for Tomorrow-"
http://www.jpf.go.jp/j/intel/youth/index.html


大川原亮
http://www.ryookawara.com/

新作『ディスイズマイハウス
http://supermilkcow.wix.com/sugarlump

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