初めまして、村本咲と申します。現在フリーランスでアニメーションを作っている者です。私は去年制作した『夜ごはんの時刻というアニメーションがクロク国際アニメーション映画祭の学生部門にノミネートされたので参加してきました。

この映画祭は船で川を下りながら船の上で映画祭を開催するという、とても変わった映画祭なので、少しでも映画祭の雰囲気を紹介できたらと思います。

クロク国際アニメーション映画祭は今年で21回目の開催です。ちなみにクロクとは場所の名前ではなく、ウクライナ語で「STEP」の意味だそうです。

学生部門(デビューフィルム部門も含まれていました)とプロフェッショナル部門が1年ごと交互に開催されており、船のコースもロシア側、ウクライナ側と毎年違ったコースになっています。今年は学生部門の年で、ロシア側の川をを船で下って行きました。

ざっくりとコースの紹介をします。赤線の街に停泊しつつ、モスクワからヤロスラブリという街へ一週間かけて行きました。

初日のオープニングパーティと、最終日のクロージングセレモニーだけは船の中ではなく街の施設の中で開催しました。しかしそれ以外はずっと船の上です。

こちらが船です。

Alxander Radischev号

5階建てで、船内は想像していたよりきれいでした。1~4階が客室、5階部分の広い部屋を上映室として使っていました。船内にはバー2つとレストランが1つありました。
部屋は2人部屋でトイレ、シャワー付きでした。

船内の様子

食事は毎回このレストランで食べます。朝食のみ有料で、昼と夜は豪華なご飯がコースで出てきました。味はとてもおいしく、日本人の口に合う優しい味付けでした。タイ米だけど米も結構出ます。

上映室はこのような感じです。

小学校の教室2つ分くらいの大きさで、前にスクリーン、中央にテレビが2台ついていました。もともと上映用の部屋ではないので、このような上映環境になっています。
ここに200人ほどの人が集まって上映を見ます。小学校の教室に100人が入っていると想像して頂ければわかるかと思いますが、かなり狭かったです。
上映環境は少し残念なのですが、船からの眺めは最高でした。

夕焼け

夜空は星が沢山見えて最高でした。今までに見たことの無い、澄んだ空でした。

それではここから、クロクの良かったところ、微妙だったところ、悪かったところの3つに分けてお話ししていきたいと思います!

まず、クロクの良かったところ!

☆ロシアの巨匠作家さん一同に会える!
ユーリ・ノルシュテインさん(名誉会長)、アレクサンドル・ペトロフさん、イワン・マクシーモフさん、イーゴリ・コヴァリョフさん(オープニングのみ出席されていました)など。
作家さんの原画やグッズを買う機会もありました。

☆船の上での非日常的な生活ができる!
しかも、コンペに入選すれば宿泊費と食費(昼夜)無料です!

☆作家同士の深い交流ができる!
一週間、ずっと同じメンバーで船の中にいるので修学旅行のような感じでした。英語が出来れば完璧です。英語が出来ないと、かなりもったいないです。(泣)

☆アレクサンドル・ペトロフさんのスタジオ訪問が出来る!
船の旅の終点、ヤロスラブリにあるアレクサンドル・ペトロフさんのスタジオを訪問しました。先着順だったので、必ず行けるわけではありませんが!
作品の制作風景を見学させていただきました。

☆毎日パーティがある!
毎日必ず船のどこかでパーティがありました。カラオケパーティ、ダンスパーティ、コスプレパーティなど。ロシアと言えば強いお酒が思い浮かびますが、意外とお酒を飲まされることはありませんでした。

カラオケパーティの様子

カラオケパーティでは、アジアチームとして友人たちと参加しました。
トトロと島唄を歌い、(なぜか)優勝しました!
手作りトロフィーをいただきました。

コスプレパーティとはコスプレをして一芸を披露するというパーティでした。
私は日本から用意していった、ひょっとことのお面をかぶって日本人の友人たちと一緒に踊りました。
ミッキー、アナ、ウォーリー、ファンタスティックMr.Fox、ヨージック、自分の作品のキャラなどみんなそれぞれコスプレをしていて、これが本っ当に楽しかったです。

トトロやカオナシが居て、嬉しかった!!

木下小夜子さんも踊ってらっしゃいました。
(※ASIFA-JAPAN会長、広島国際アニメーションフェスティバル ディレクター

では、つぎに微妙だったところ!

◯一般のお客さんは入れない
船に乗れる人数が限られているので、一般のお客さんは入って来れないようになっています。他の映画祭ではふらっと来る市民の方とか、ファンの方とか、いろんな方々にオープンなので広がりがあったりするのですが、クロクはそれがありません。いいところも悪いところもあります。

◯停泊場所の街に特に何も無い
毎日ちがう街に停泊し散歩の時間があるのですが、映画祭側から街の説明などは特に無く、どこに何があるかわからない状態で船から出て歩いていきました。私たちはこれを放牧の時間と呼び、特に目的も無く歩くだけでした。それも十分楽しいですけどね!

この何もなさ伝わりますか。

たまに教会があります。

たまに廃墟も。

4日目の停泊場所ムィシュキンはロシア語で「ねずみ」という村で、ねずみ博物館があると聞き期待して向かったところ、

ねずみのぬいぐるみが沢山置いてあるただのお家でした。

歴史的建造物や巨大遺跡なんかを期待したのが悪かったのでしょうか。

◯非常に体調を壊しやすい
ロシアは本当に寒く、夜は0℃前後になりました。その上乾燥しているし、人が密集した中で過ごすので風邪が蔓延しました。

◯自己責任
船の出発時間に点呼などしないので、乗り遅れると大変なことになります。過去に遅れた人がいたみたいです。

そして、悪かったところ。

・上映環境
まさかテレビで上映を見るとは思っていませんでした。しかし船でやる以上仕方が無い!

・プログラムが少ない
他の映画祭では上映会場がいくつかありその分プログラムも沢山ありますが、クロクは上映会場が1つしかないので上映の機会が少なかったです。

しかしノルシュテインさんの講義やMaster-mindingという厳しい批評会なども有り、良い経験になりました。

ノルシュテインさんの講義の様子。

Master-mindingでは個々の作品に対して批評と質問をします。厳しいことをズバっと言われるので皆表情が暗いです。

以上、クロクの良かったところ、微妙だったところ、悪かったところでした!!

今回、実は良かったところがもう1つありまして、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻を修了した朱彦潼さんの作品『コップの中の子牛がグランプリを受賞しました!

同期で入学した友人の輝かしい姿を見ることができ、本当によかったなぁ~と感慨深いです。
めでたし!トロフィーは船にちなんで鐘でした。

では最後にマイベストアニメーションinクロクを3つ紹介します。

Ben Cady監督『Anomaliesトレーラー)
最小限の線でとても繊細に動きを描いているところが良かったです。


Anna Heuninck監督『Cash Register 9
おばさんの動きをものすごく追求している姿勢に心を惹かれました。


Pawel Prewencki監督『BEACH
目の付け所に共感できる部分があり、好きです。

お時間ありましたらぜひ見てみてください!

記念写真

以上、長いレポートでしたが少しでもクロク国際アニメーション映画祭のことを知って頂けたら嬉しいです!
行ってみたいなーと思った方は是非応募してみてください!
私もまたいつか参加できるよう、制作を頑張りたいと思います!最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


第21回クロク国際アニメーション映画祭
The 21th KROK International Animated Film Festival
http://www.krokfestival.com

日本からのノミネート:
村本咲『夜ごはんの時刻』
平岡政展Land』
朱彦潼『コップの中の子牛』(グランプリ受賞)
織田明海に落ちた月の話


村本咲
http://sakimrmt.blogspot.jp/
https://vimeo.com/user16859678

夜ごはんの時刻トレーラー