2013年に大学院修了作品として制作されたキム・ハケン監督『MAZE KING』が、Webで全編公開されました!一度観ただけでは飽き足らない不思議な雰囲気が魅力的なこの作品、待望のWeb公開ということで、今回はキム・ハケンさんにお話をお伺いしました。

まずは『MAZE KING』をご覧ください!

―― キムさんは、普段どのような活動をしているのですか?

キム: 2013年に東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻を修了してから、フリーランスでアニメーションやイラストなどを制作しています。今年の春から大学院の方で助手をやっているので、助手の仕事をしながら短編アニメーションの新作を制作しています。

―― 本作『MAZE KING』について教えてください!

キム: この作品は人生の中で何かが大きく変わる時、人の内部でソワソワするものを描いています。もう昨日までの自分ではいられなくなってしまうとき、進もうとする者と、留まろうとする者の会話のような作品です。『MAZE KINGというタイトルは直訳すると”迷路王”になりますが、迷いの中の王様という意味を込めています。

まず短編小説として読めるシナリオを先に書いて、それを短編アニメーションとして映像化するというプロセスで制作していますが、映像化するにあたって最も気を付けていたことは”よくわからなくする”ことでした。わからなくするのは単なる意地悪ではなく、パズルの難易度のようなものだと思います。パッと観て答えがわかるのでは楽しめる時間がなくなってしまうので、見せる順番や場面、キャラクターの設定などで見る人に考えさせるように気を配りました。キャラクターの台詞を当てるときも説明的にならないようにしています。

―― 不思議なキャラクターがたくさん登場しますが、それぞれにはどういった意味があるんですか?

キム: キャラクターにはそれぞれ意味があってその意味を説明することもできるのですが、この作品の場合はキャラクターの意味を考えるというのが一つの楽しみでもあります。世の中には説明してしまうと楽しくなくなるものもあるので(もちろん逆のパターンもありますが)、答え合わせはやめておきたいですね。ただ言えるのは、キャラクター達は体の部位とリンクしていること、体の部位はキャラクター達がいる場所とリンクしているということです。それに個人的な歴史を加えて設定しているので、ランダムに近い状態ですし、それが目指していることでもあります。

―― 声の演出が魅力的ですが、何かこだわりなどがあったんですか?

キム: 大友龍三郎さんというベテランの声優さんに声をやっていただきました。大友さんの声は作品の色を決める大きなポイントとなり、作品のクオリティをグンとあげてくれました。声に求めたものは”ハードボイルド”と”おかしさ”だったのですが、両方を成立させていただいたので本当に感謝しています。大友さん初の少女役だったのですが、”中森明菜のモノマネをする友近さんのように”とお願いしました。

―― 今回の作品制作で使用したソフトウェアや技術を教えてください。

キム: まず3ds Maxで簡単なモデリングをしてセットを組み、レイアウトやカメラワーク、簡単な動きなどを作ります。それからできた絵を一回紙にプリントアウトし、ペンでトレースしてディテールを加えて作画します。作画をスキャンしてパソコンに取り込んだものをAdobe Photoshopで色をつけて、After Effectsで合成し、タイミング調整などの編集を行いました。

―― 本作は国際映画祭での受賞やノミネート、上映などもたくさんされたんですよね。

キム: ザグレブ国際アニメーション映画祭2014で学生部門審査員特別賞、CutOut fest 2013学生部門審査員特別賞、Anim'est国際アニメーション映画祭2013 BEST STUDENT賞他、多数ノミネート・上映されました。

―― 今後の活動予定を教えてください!

キム: 現在、新作を制作しています。シナリオはもう決まっていて、技術的には『MAZE KINGで使った3DCGによる制作方法をより発展させて活用していくつもりで、今は素材のモデリングなどをしているところですね。順調にいけば来年中には発表できると思います。

―― 最後に、tampen.jp読者のみなさんへメッセージをお願いします。

キム: 作品を作るのは単なる自己満足ではなく、人と繋がるためだと思って作っています。また新しい作品で人に会って、色んなお話ができるように、また違う場所にいけるように頑張りたいと思います!

キャラクターやセリフの意味を推理して、個々の理解で何度も楽しむことができる作品なんですね。ガイドに3DCGを使用しているのは意外なお話でした。制作中の新作もとても楽しみです。キム・ハケンさん、どうもありがとうございました!


キム・ハケン
https://vimeo.com/hakennn