2014年7月29日にWeb公開された話題のミュージックビデオ(MV)、sasakure.UK 『アンチグラビティーズ feat.GUMI』。
作中繰り広げられる、”トンデモ未来なSF世界”は幻想的でちょっぴり切なく、まさにこの季節・夏の夜にピッタリな映像に仕上がっています。
今回は、本MVを手掛けられた、tampen.jp連載”きょうのだんご”でもお馴染みのアニメーション作家、植草航さんと、これまでもsasakure.UKさんの楽曲MVを手掛けていることで知られているVFXスーパーバイザーのTa-kさんにお話をうかがいました。(文末にsasakure.UKさんからのスペシャルコメントもあります!)
まずはMVをご覧ください!
―― Ta-kさんは、普段はどのような活動をされているのですか?
Ta-k : 僕は、普段の仕事ではCMやゲームOP、PV・MV、ライブイベント映像等と、フォトリアルなものからモーショングラフィックなものまで幅広く作っています。
普段の作業の後、夜の時間や休日を使って個人的な制作を行っています。PVやCDジャケットのグラフィックが中心です。また『MAGNITY』というグループのメンバーとして、静止画作品を大体年に一回制作しています。
―― 今回のMV制作に至った経緯を教えてください。
Ta-k : sasakure.UKさんのマネジメントをされている方から、お声掛け頂きました。もの凄いアニメーション作品を作られる監督の方がいるから、一緒に制作してもらえないか、と。植草さんの映像作品はその時に初めて見たのですが、凄まじいクオリティーで本当に驚きました。sasakure.UKさんとは、以前『有形ランペイジ / ストロボラスト feat. 三森すずこ』のMV制作やアルバム『トンデモ未来空奏図』のクロスフェードPVの制作をさせて頂いていて、今回の『アンチグラビティーズ』は、『トンデモ未来空奏図』の中でも一番好きな曲だったので、是非やりたいです、と二つ返事でお引き受けしました。
植草 : 去年の5月29日にリリースされたsasakure.UKさんの3rdアルバム『トンデモ未来空奏図』の初回特典で収録された『アンチグラビティーズ』の漫画を描かせていただいたのですが、その作品をMVにできたらというお話をsasakure.UKさんのマネジメントをされている方から引き続きお声がけしていただき制作が始まりました。漫画では最初にsasakure.UKさんから楽曲のイメージやコンセプト、歌詞を頂いて、そこからイメージを膨らませて制作して行きました。すごく共感のできる世界観で楽しかったのを覚えています。
―― 今作のテーマや表現したかったことは?
植草 : 漫画のストーリーと変わらずに、アンチグラビティーズを聴く一人の女の子が自分の日常を通してだんだんと曲との距離を縮めていくというストーリーです。アンチグラビティーズが空間や世界観がどんどん広がっていく楽曲だったので、やっぱりそこに世界があってほしいと思い、昔通っていた通学路などを思い出したりして、異世界なんだけど今自分たちがいる世界と地続きになっていてほしいと願って制作していました。
Ta-k : 僕は元となる漫画が、あくまで一人の女の子のお話であるという事を意識していたので、この子の日常と出来事を出来るだけ綺麗に映像化したいな、と思っていました。女の子を取り巻く世界は、トンデモ未来なSF世界を展開しています。この植草さんの漫画の世界に、時間軸を加えたらどんな世界になるの!?と常に考えていました。
―― お二人は、どのような役割分担で作業されたのですか?
Ta-k : 最初のコンテとビデオコンテは、植草さんが作って下さいました。そこから分担で、アニメーション素材の制作を植草さん、コンテ・漫画の映像化を僕が担当しました。僕なりの演出を織り込んだ映像を共有して、植草さん初め、皆さんから意見やアイデアを頂いたり、追加素材を頂いたりしながら進めていきました。コンテ意図から大きく違うところは軌道修正しましたが、基本的に自由にやらせて頂いた感じです。植草さんから送られてくる素材がどれも素敵なものばかりだったので、どうしたら活かせるかは、いつも楽しい悩みの種でした。
植草 : まずたたき台になるコンテを作り、
―― 今回の制作で使用したソフトウェアや技術を教えてください。
植草 : 線画は鉛筆で書いて、Photoshop、AfterEffects、RETAS STUDIOで加工していきました。
Ta-k : 3D表現は3ds MAX、絵作りはAfterEffectsで行っていました。3ds MAX内では、ビー玉のようにリアル目の質感を付けて物理計算させたり、植草さんのイラストをプロジェクションマッピングしたり、実写素材を撮影して使ったりとカットごとにマチマチで、それをAfterEffectsで加工してイラストに馴染ませています。
―― 今回、植草さんの絵が3DCGで表現されているのがとても新鮮で驚いたのですが、どのような意図で3DCGを使用されたのですか?とてもステキな3次元空間の世界に見入ってしまいます!
Ta-k : 有難うございます。そこはシンプルに、僕が普段の仕事で3Dを中心に扱い続けてきたから、というのが根本的な理由です。植草さんに大量の箱型住宅を描いて頂くのは大変過ぎた、というのもありますが(笑) ただやはり、最初にお話を頂いた時から、この世界観に奥行きを与えて女の子の見ている世界を広げてみたいな、という思いはありました。世界を広げるという表現では、3Dはとても強力なツールです。なので、植草さんのテイストを損なわないように3Dに落とし込めたら、きっと面白く且つ素敵になると思い、今回の基本ツールにしました。
―― 植草さんにとっては、提供した素材が3Dになったりと、普段と違う制作になったのではと思いますが、いかがでしたか?
植草 : Ta-
―― 最後に、tampen.jp読者の方へメッセージをお願いします。
植草 : 今作は新鮮に楽しく作らせていただきました。トンデモ未来空奏図も素晴らしいアルバムですので是非手に取っていただけると嬉しいです!
Ta-k : 漫画を知っている方にも、ご存知ない方にも楽しんで頂けるよう色々織り込んだつもりです。この曲が収録されているアルバムもとても素晴らしいので、もう一度聴き直してみたり、お手に取ってもらえる切っ掛けになれると嬉しいです。
仕事と自主制作を両立させている、クリエイターの鏡のようなお二人。今回のMVでは、未来的ノスタルジアと今この瞬間の切なさ、そしてシュワシュワとはじけ消えゆくソーダのような儚さと何にも代えがたい強い気持ちの融合した不思議な新世界が構築されていますが、このお二人、そしてsasakure.UKさんの楽曲がぞれぞれ作用し合い成し遂げられた結果だったのですね。Ta-kさん、植草さん、どうもありがとうございました!
なお、本MVの原作となっている植草航さんの漫画は、『アンチグラビティーズ feat.GUMI』も収録されているsasakure.UKさんのアルバム『トンデモ未来空奏図』初回生産限定盤の特典となっていますので、まだご購入されていない方はお早めに!
【追記 : sasakure.UKさんからのコメントが到着しました!】
sasakure.UK : 人類がもし重力に抗う技術を身につけたとしたら、人々の生活はどのように変わるだろうか。
一見夢の様な世界に映るかもしれないけれど、もしかしたら彼等も自分たちの日常とさほど遠くない所で苦悩するかもしれないし、これまでと変わらない日常観を垣間みるかもしれない。
夢や、不可思議な世界観に憧れる気持ちがあります。けれどもそこにあるリアリティやどうしようもなくそこにある生活感、というものを感じる瞬間もあります。
双方の価値観があるからこそ、自分の空想観が他人とは思えないような親近感を持って僕のすぐそばに存在しているような気がします。そんな想いを作品にしたのが『アンチグラビティーズ』です。
"空間の演出"という所がポイントで、摩訶不思議な世界観を描く事が出来る植草さんにお願いしました。
オブジェクトが浮かぶ様子を3Dで表現できたら表現の幅が広がると思い、3Dエフェクトは有形ランペイジの『ストロボラスト』のMVでおなじみのTa-kさんに依頼しました!
MVの見所は、女の子が何気ない生活を送りながら色々な生活シーンを映すのですが、学校だったり、横断歩道だったり、住居だったり、電車だったり、不思議な世界が当たり前のように存在する"世界観"です。
お二方シーンそれぞれにこだわりを持って制作してくださったので、それぞれ細かいところに背景 のコダワリを感じました。
また、ラストの演出はかなりみんなで話し合ったので、お気に入りですね。色々考えられる仕掛けや演出があると思うのでみなさま是非、繰り返し見てみてくださいね。
『アンチグラビティーズ feat.GUMI』
http://nico.ms/1406552057
http://youtu.be/CI9Gr9kxtJ0
sasakure.UK
http://sasakuration.com/
トンデモ未来空奏図(初回生産限定盤)(DVD付) [CD+DVD, Limited Edition]
http://www.amazon.co.jp/dp/B00BI39JV4
Ta-k
http://www.stalactite.net/84214/works