Hiromu Okaによる自身初の個展「SAVE POINT」が、2024年10月4日から27日にかけて、東京・表参道のK Art Galleryにて開催された。
Okaは、リソグラフ印刷された原画を1フレームごとにスキャンすることで生成する手触り感に富んだモーショングラフィックス作品でよく知られるアーティストだ。彼は、リソグラフ印刷を用いたモーショングラフィックスという表現ジャンルを、ここ日本において牽引してきた人物と形容しても過言ではないだろう。
Okaは、これまでコミッションワークの領域で高く評価されてきた。だが、彼の初個展「SAVE POINT」は、これまでの彼の仕事から受ける印象を、いい意味で裏切る意欲的な展示であった。
Okaのコミッションワークは、クライアントが望む本質に迫り、その魅力をより多くの鑑賞者や顧客に届けるための特別な体験を生み出すために、創造力の大半が費やされていたように思われる。これは皮肉や批判ではなく、むしろ最大級の賞賛だ。これまでの彼の仕事が、シンプルでありながらも親しみやすい魅力を有していた証左だからである。
だがしかし、「SAVE POINT」においてOkaは、一転してパーソナルなテーマに取り組む。Okaは、私的な主題と向き合う過程で自身の原点へと立ち返るとともに、根源的な「記憶」の在り方を思索し、その試みは同時に映像の時間芸術としての横顔を浮き彫りにする。
「SAVE POINT」の中核を担うインスタレーション作品《SAVE THE DATA SAVE THE MEMORY》において、幼い頃のOka自身もまた被写体の一部として記録されたホームビデオは、1フレームごとに印刷され、再構成されている。
制作者自身の記憶が鮮明な部分はより大きなサイズで印刷され、被写体も明瞭だが、反対に記憶が不鮮明な部分はより小さなサイズで印刷され、それが拡大されることで、被写体は霞がかって不明瞭になっている。
この作品では、客観的な「記録」ではなく、主観的な「記憶」の粗密こそが主題として前面に躍り出ている。いやむしろ、ときにイメージが描き加えられることで浮き彫りになるのは、「記録」に触れるという事後的な仕方でしか触知しえない「記憶」の在り方であろう。そして、そうした「ここにある」でも「かつてあった」でもない、いわば過去進行系の「記憶」の様相は、映像に固有の時間経験とパラレルであることに気がつくはずだ。
一連の鑑賞経験はOkaによって注意深く設計されており、時間の粒子が見えると錯覚するほどの濃密な時間的経験を創出することに成功している。
展覧会URL:https://k-art-tokyo.com/exhibition/save-point/
Hiromu Okaポートフォリオサイト:https://hiromuoka.com