こんにちは。松浦直紀(まつうらなおき)と申します。
『火づくりという短編アニメーションを企画中で、MotionGalleryさんで、今年10月7日より、制作支援金を募集するクラウドファンディングを開始させていただきました。

連載コラムの二回目は、先日公開したキービジュアル第一弾の「背景」についてお話ししたいと思います。

『火づくり』の背景は「隠(がくれ)くん」という友人が担当してくれる事になり、今回はキャラクターの絵と合成した1回目のビジュアル制作になります。
隠くんは、普段はアニメーションの背景美術のお仕事をしていて、プロとして活躍している友人です。僕からお誘いしたことで、制作への参加をしてもらえる事になりました。(隠くん、どうもありがとうございます!)

作品の世界観は、監督である僕のイメージ(頭の中)に委ねられているので、まずは僕の方から「原図(げんず)」と呼ばれる背景の下描きの絵を描いて送りました。
それがこちらです。

個人的には良い感じかなーと思っていたのですが、隠くんから色々な意見をもらいつつ、改善を図っていきました。
大きなものを挙げると・・・

○人物を小さくして都市の巨大感を強調する
○光源を主人公が歩いている方向(画面の左奥)からにして印象的な絵にする
○遠景を入れ込み、空間の奥行きを出す

などなど・・・です。

僕の中の「こういう雰囲気にしたい」「こういう印象の絵にしたい」というぼんやりしたイメージに対して、具体的な方法論を提示してもらった感じです。
僕は普段、アニメーションの演出家として、原図をコントロールする立場でお仕事をすることが多いですが、一枚の絵としての完成度をどうやって高めて、意図するビジュアル空間を作っていくか、という具体的な技術については、隠くんの圧倒的な経験値の高さに支えてもらう形になりました。

そして、色味や光源などの調整を加味したラフイメージをアップしてもらいました。
それがこちらです。

グッと、完成の絵の雰囲気に近づきましたね。飛行機の形や道路の形状など、僕からいくつか細かい修正をお願いしましたが、大枠の方向性は見えてきました。
そして、そのあとに隠くんが描いてくれた絵がこちらです。

陰影の濃淡や、各パーツの書き込み具合についての検証・・・という意味合いがあります。
そして、ペン画の工程に進みます。

近景の建物に落ちる影は実線で描いてもらっています。遠景の方は距離感・空気感を出すために、近景の建物ほど描き込みは行いませんでした。
そして、ここから一気に仕上げていきました。

と、大まかな工程としては以上のような流れになっています。

隠くんはアナログ(紙と絵の具)でも、デジタル(主にAdobe Photoshop)でも背景を描くことができるので、作業工程についても色々と話し合い、意見をくれました。
結果、「ベースの線画や、にじみを使いたい部分はアナログで描いて、仕上げはデジタルで行う」というミックススタイルになっています。

この絵は、主人公が暮らす「コキーユ」という街です。
機械化が進み、都市の機能のほとんどが自動化されている世界、というイメージで、奥の空に飛んでいる飛行機も、機械が勝手に意思を持ってフワーッと不気味に浮遊している、という雰囲気を作りました。
重力コントロールが可能になっている、という設定にしているので、建物も、僕たちが暮らす世界のものよりはいびつで、奇妙なカタチをしています。

画面に横切る曲線は高速道路です。乗り物も自動化していて、猛スピードでビュンビュンとビルの隙間を行き来しているイメージです。
階層も多層化していて、主人公が立っている地面の下にも何層にも及ぶ建物が連なっている設定になっています。

巨大化していく都市の雰囲気を強調したかったので、主人公以外のモブキャラを描くことも排除しました。結果として、大きな機械の塊の中に、ポツンと立っている主人公の心情も表現できたので良かったと思います。

以上、キービジュアルのメイキングでした!

・・・現在、「火づくり」は、作品世界のビジュアルイメージの基礎固めになる「プリプロダクション」を行なっています。また第二弾のキービジュアルの制作も進めているので、お楽しみに!

今回はこの辺で!
どうもありがとうございました!


『火づくり』とはーーー

 他界した父の遺品から、一本の壊れた鋏を見つけた少年。母によると、父は以前造園の仕事に携わっていたという。そして、その鋏は、異国に住む「佐助」という鋏鍛冶の手によるものであることが分かる。鋏を直してもらうため、少年は「佐助」に会いに行くーーー

 松浦直紀が監督として企画・制作中のオリジナル短編アニメーション作品『火づくり』は、大阪堺市に実在する鋏鍛冶職人「佐助」をモデルにした、架空の世界の物語です。松浦自身が佐助の鋏の切れ味や美しさに感動し、「こういう職人さんの姿を描いてみたい」と思った事がきっかけで、本企画の構想が始まりました。

 伝統工芸の世界を通じて、「モノを大切に使い続けることの素晴らしさ」を伝えたい。それが、松浦が本作に込めるテーマです。


オリジナル短編アニメーション『火づくり』は、
クラウドファンディングサイトMotionGalleryで制作支援を募集しています!
https://motion-gallery.net/projects/hizukuri

作品のナビゲーションキャラクターアメノさんのtumblrはコチラ:
「アメノさんのふかふか日記」
http://amenosandiary.tumblr.com