『もう泣く牛』第五回
<ネイマールから100年前>

時代の寵児、ネイマール・ダ・シウバ・サントス・ジュニオール選手が
来日しましたね。僕はサッカーが好きなので、とても感激しました。
彼はワールドカップでも沢山の活躍をみせてくれました。
ひと際細い身体から繰り出されるしなやかで
素早いフェイント、その動きはまさに芸術です。
なぜ僕はネイマールに生まれなかったのか。
世の中の理不尽を受け入れるには、少し時間が
必要かもしれません。

話はおよそ100年前に遡ります。急に。
サッカー選手を題材にした絵画で有名なものに
『サッカー選手のダイナミズム』(ボッチョーニ/1913)と
いうものが有ります。
ボッチョーニはこの位の時期から
キュビズムの影響を色濃く現していったと
言われていますが、未来派の「技法宣言」に
謳われたとされる相互浸透も見て取れます。

この時代の作品群は題材も表現も「動き」について
追求し、果敢にアプローチをしているものが
多く見られて、アニメーションをやっている僕からみても
とても興味深い時代です。

キュビズムがモチーフを分解し、視点の移動を行ったように
アニメーションも時間をコマ単位に分解し、時には
視点の移動を行います。
というのも、アニメーションはパラパラ漫画のように
一コマ一コマ作られているからです。

その分解のし方をどう工夫するか
どうやって遊ぶか。そういった事が
アニメーション制作の醍醐味かなと
再認識しました。
そして、より複雑且つ大胆な運動が
例えば「サッカー」なんかが、動きを捉える上で
モチーフとなっていった事実が、その時代性を
感じさせるのでした。


今月のイラスト
<マルセイユルーレット>

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