こんにちは、アニメーション作家の青木純です。
現在私の母校である東京藝術大学の陳列館で「別品の祈り-法隆寺金堂壁画-」展が開催中です。
1949年に焼損した法隆寺金堂の壁画12面をデジタル技術を用いて新しい形で復元するという試みの成果発表なのですが、この中で8Kスーパーハイビジョンで上映される法隆寺金堂壁画をテーマにしたアニメーション映像作品の制作をお手伝いしました。

さてtampen.jpの読者でもまだ聞き慣れないと思われるワード、「スーパーハイビジョン・8K(はちけー)」とは何ぞや?という所から話を始めてみましょうか。
8Kとはずばり(1K≒1000なので)画面横方向に約8000ピクセルの膨大な情報量を持つ映像の事です。
日本では地デジ放送開始に合わせてフルHDの液晶TVが各家庭に普及しましたが、このフルHDの解像度がほぼ2Kなので、8Kというのはそれを縦横にちょうど4倍、面積にして16倍の緻密さを持つという事になります。

スーパーハイビジョン via Wikipedia

日本における8Kは以前からNHKが中心となり「スーパーハイビジョン」という呼称で開発を進めて来ました。
また最近では総務省が東京オリンピック開催に合わせて8KのTV放送開始計画を2020年に前倒ししたというニュースも記憶に新しい所です。

今回の展示ではこの8Kプロジェクターを250インチという大画面に投影しての上映ですが、スクリーンにかなり近寄って目を凝らしてもなかなかピクセルの粗が見えません。
個人的にはその圧倒的な緻密さにあたかも巨大な印刷物がそのまま動いているかのような錯覚を覚えます。
ただ現在8Kサイズの映像コンテンツは非常に数が少なく、中でもアニメーションとなるとまだほとんど世に存在していません。
その制作の難しさと機材の希少さ・画面の壮観さも含めて、少しだけ未来の技術というわけです。

(※画像クリックで拡大)

さてここでかなり気の早い話とは理解しつつ、あえてアニメーション関係者へ向けて下記のような問題を提起してみたいと思います。

アニメーションと言えども映像のジャンルとして世の中に流通するコンテンツである以上、それほど遠くない将来に8K制作の波が押し寄せてくる事態が想像できます。
私は今回の制作を通して、その時アニメーションの制作者側が旧来の方法論のままで大丈夫なのか?という問いについて考える必要があると感じました。

具体的にはアニメーション制作における専門的な話になってしまいますが、8Kでの鑑賞に堪えるような粗の見えない素材や画作りにかかる技術コスト、また秒間60や120といったハイフレームレートが標準となる中、伝統的な8(3コマ撮り)や12(2コマ撮り)での作画は変わらず観客に受容され得るのか、2Dと3Dのどちらにおいても編集やエフェクトにおける計算量の顕著な増加やそれに伴う処理時間の増大等々、解決しなければならない課題は多岐に渡ります。

そんな来るべき8K時代にアニメーションはどうあるべきか?を考える際の一つのサンプルとして、私はこの「別品の祈り」展を業界内外に関わらず色々な立場の方に観て頂きたいとも考えています。

ちなみに向かいの東京藝術大学美術館では「法隆寺-祈りとかたち」展が開催中です。
こちらは有料となりますが、お越しの際はぜひ併せてのご観覧をお薦めします。

(青木純)


「別品の祈り-法隆寺金堂壁画-」
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2014/kondou/kondou_ja.htm

会期: 2014年4月26日(土)- 6月22日(日)
開館: 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日: 毎週月曜(4月28日、5月5日は開館)、5月7日(水)
観覧料: 無料

会場:
東京藝術大学大学美術館 陳列館
〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
JR上野駅、地下鉄根津駅より徒歩10分

主催:
COI-T「「感動」を創造する芸術と科学技術による共感覚イノベーション」実行委員会
東京藝術大学
JVCケンウッド
情報通信研究機構
NHKエンジニアリングシステム
NHKエンタープライズ
NHKプロモーション

後援: 法隆寺

8K機材提供のJVCケンウッド社によるプレスリリース:
http://www.jvckenwood.co.jp/press/2014/04/press_140425.html