上甲トモヨシ(じょうこうともよし)さんと一瀬皓コ(いちのせひろこ)さんによるクリエイティブユニット・デコボーカルが、先月8月に公開した新作短編アニメーション『ハロウシンパシー』。優しい疾走感に溢れるシナリオアートの楽曲『ハロウシンパシー』と共に次々と展開されるポップでコズミックな世界が視聴覚にパワーを与えるような、楽しい作品です。
今回は、デコボーカルのお二人に『ハロウシンパシー』制作についてお話を伺いました。
まずは公開された新作『ハロウシンパシー』をご覧ください!
―― デコボーカルさんは普段どんな活動をしているのですか?
デコボーカル: 普段の仕事ではテレビ番組内のコーナーや広告のアニメーションを引き受けています。特に、教材や教育番組など子ども向けのアニメーションを制作することが多いです。イラストレーションの制作やワークショップの実施など幅広く活動してます。また上甲は日本アニメーション協会の理事を勤め個人制作も行っています。一瀬は個人制作にライブペイントなどパフォーマーとして、それぞれで活動もしています。
写真: ライブペイントをする一瀬皓コさん
―― この作品『ハロウシンパシー』について教えてください。
デコボーカル: 『ハロウシンパシー』はシナリオアートという3ピースバンドが2014年1月にミニアルバム「night walking」でメジャーデビューをした中の楽曲で、アニメーションはシナリオアートとのコラボ作品になります。『Lizard Planet(2009/上甲トモヨシ)』を観たレコード会社の担当の方から連絡を頂き制作することになりました。当初はミュージックビデオとして話が進んでいましたが、シナリオアートの方向性が変わり、デコボーカル作品への楽曲提供という形でオリジナル作品となりました。ミュージックビデオのスタイルですが、短編としても楽しめる作品であると思います。
この作品は太陽をイメージしたクイーンと、全体の存在であるスポットの物語です。クイーンの輝きにより様々な生命たちが誕生した世界。しかし、クイーンよりも力の大きいスポットに生命たちは吸収されてしまい、自分の存在に疑問を持ち力を失ったクイーンもまた、スポットに吸収されてしまいます。しかし、全てを受け入れることで自分の生き方に気づき以前にも増し力強く輝きます、そしてスポットと一体化することによって真の宇宙の姿に変わります。
元々一瀬の落描きにヒントを得て太陽のクイーンが誕生しました。太陽のクイーンから話が誕生し作品になりました。その当初描いたイラストがこちらです。
―― 本作品でのお二人の役割分担を教えてください。
デコボーカル: まず二人で作品の構想やイメージを話し合いました。内容が固まってきたところで一瀬がキャラクターのデザインと絵コンテを担当しました。動画は二人で描いていますが、上甲と一瀬にはそれぞれの得意な動画があるので絵コンテからお互いに描けそうなところを分担しました。上甲は「中割」が得意で、丁寧で滑らかな動画を描きます。一瀬は「送り描き」を得意とし、リズミカルでダイナミックなアニメーションを描きます。作品を観てどちらが描いているか予想してみてください、滑らかに動いてるのが上甲、勢いのある動きは一瀬です。
動画がある程度終わったら残りの作業は上甲が担当しました。主に仕上げとAdobe After Effectsを使ったコンポジットと編集をしました。他の作品でもそうですがデコボーカルは一瀬がデザイン、演出は作品によって分担、動画は二人で描き、上甲がデジタル作業というスタイルが多いです。
―― 本作の制作期間とチーム編制を教えてください。
デコボーカル: 制作期間は2ヵ月半です。構想と絵コンテに1ヶ月、制作には1ヵ月半かかりました。
基本的にデコボーカルの制作はいつも二人体制ですが今回は制作補助として澤田裕太郎さんにPhotoshopでの仕上げ作業等を手伝って頂きました。
―― 今回の制作で使用したソフトウェアや技術を教えてください。
デコボーカル: 動画用紙に鉛筆またはペンで動画を描きスキャンしてパソコンに取り込む方法で制作しました。この作品で描いた動画枚数は約1600枚です。
取り込んだ動画はPhotoshopで仕上げをし、After Effectsでコンポジットして完成です。ただ、背景に関しては実は普通の絵ではありません、過去に一瀬がライブペイントで描いた作品を背景に使用しました。一瀬の描いた絵の中から共通するテーマやイマジネーションを感じたため、部分的に使用しました。
そのライブペイントの様子はこちらからご覧いただけます。
2013.12.13『Talkin' side-A and the color』
2013.10.31『視聴覚ハロウィンだ!』など(再生リスト)
― 本作はすでに各地で上映されているそうですね。
デコボーカル: ソウル国際カートゥーン&アニメーション映画祭(SICAF2014)のShowcase部門にノミネート、第9回札幌国際短編映画祭のジャパン・オフ・シアターで上映されました。今後また上映がある際にはホームページ及びtwitterなどで情報をお知らせいたします。
―― tampen.jp読者のみなさんへメッセージをお願いします。
デコボーカル: 今回はこれまでデコボーカルが描いてきた雰囲気とは違って少しポップにキャラクターを魅せることを意識しました。クイーンの感情、そしてアニメートにも注目して楽しんでいただけたらと思います。制作の機会を与えてくださったシナリオアートと関係者の皆様に感謝しています。この作品を通じてシナリオアートの音楽も楽しんでいただけたらと思います。ありがとうございました。
動きのバリエーションの豊富さや緩急の面白さは、お二人のバランスだからこそ生み出すことができるものだったのですね。デコボーカル・上甲さん一瀬さん、どうもありがとうございました!
デコボーカル
http://decovocal.com/
上甲トモヨシ twitter
https://twitter.com/TomoyoshiJoko
一瀬皓コ twitter
https://twitter.com/HirocoIchinose