飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍の場を拡大中のアニメーション作家、冠木佐和子監督の新作ミュージックビデオ『MASTER BLASTERが公開されました!

2014年6月に発売された菅原信介さんのデビューアルバム「ときめきスイッチ」に収録されている本楽曲『MASTER BLASTER』。紡ぎだされる衝動に魂が引き寄せられるようなこの楽曲と絡み合うのは、次々と展開される脳内遊びのようなアニメーション。今回はこの大ボリュームのMV制作について、冠木佐和子さんにお話を伺いました。

まずは『MASTER BLASTER』MVをご覧ください!

―― 今回、おもしろい経緯で本MV制作に至ったそうですね。

冠木: 前の職場の上司と、シンガーソングライターのルンヒャンさん(http://rung-hyang.jp/)と幡ヶ谷のモンゴル料理屋で飲むことになり、チャリで行きました。そしたらシンガーソングライターの菅原信介さんも一緒に飲みにきて、MV制作を依頼されました。菅原さんはデビューアルバムリリース直前で、ルンヒャンさんは、菅原さんと私が繋がったら面白いだろうなあ~と思っていたらしく、ちょうどよいタイミングで飲み会の誘いがあって、色々ちょうどよかったみたいです。

―― 本作『MASTER BLASTER』MVについて教えてください。

冠木: 今回のMVのお話を頂いた時に、菅原信介さんに曲についてお伺いすると「カーテンを閉めて下向いて作っていたらどんどん身体が変化していって知らない間に出来た曲」と言われ、初めて自分を出せた曲らしいので、私もそんな感じで作ろうと思いました。
全体的なストーリーとしては、好きな人のお尻の穴に隠れていたい女の子のお話です。女の子は、全部を相手に捧げてしまいたくなるかと思えば、相手を全部食べてしまいたくなり、相手の本心が読めず、翻弄されます。そこには、恋しい気持ちや嫉妬心、独占欲、罪の意識など色々な感情が渦巻きます。私は実際、好きな人のお尻の穴に隠れていたい(or住みたい)とよく思うのですが、そんな考えをそれとなく歌詞とリンクさせながら描きました。

―― 曲や歌詞に細かく合わせた演出で全体がかなりきちんと構成されていますが、絵コンテは描かないそうですね?

冠木: 絵コンテは基本的に描かないというか、描けない私です。「こんなかんじにしたい」というのが頭の中にあって、それを考えながら吐き出していく感じです。私は予定を立てる苦手なのですが、絵コンテもそれと同様で苦手です。なんか怖いです。ただ、「絵コンテは描いたほうがよい」と恩師の野村辰寿先生には前々から言われているし、大学の学部時代には絵コンテの発表が義務だったので一応とりあえず的にクソみたいな絵コンテを描くのですが、いつも絵コンテとは大幅に違う出来になってしまいます。描いていると「絵コンテがあったほうが楽だろうなあ」と思うのですが、なんだか苦手です。アニメーションを描く度に、「次からはちゃんと絵コンテ描いてから描こう」とずっと思っているのですが、描けません。次からはちゃんと描きたいです。

―― 制作期間は?全ておひとりで作られたのでしょうか。

冠木: 4ヶ月です。ひとりです。


写真: 本作の原画たち

―― 今回使用したソフトウェアや技術を教えてください。

冠木: Adobe PhotoshopとAfterEffectsを使用しました。あと、水江未来さんのお手伝いアルバイトに行った時に「iMotion」というコマ撮りアプリを知って、それで動きの確認をしてました。今まではパラパラめくるかスキャンしないと動きが分からなかったのですが、このアプリはすぐ動きの確認をできるので本当に画期的だと思いました。

iMotion
https://itunes.apple.com/jp/app/imotion/id421365625?mt=8

あと同じく水江さんのところで、「中割り」という技術を今さら知ってそれやりました。水江さんのお手伝いで、アニメに関係ないことも含め色んなこと学びました。とても有意義な時間でした。
(編集注:中割りとは、動きのキーになるコマの絵を先に描き、その間のコマの絵を埋めていくアニメーション技法。)


写真: ギリギリなかんじでiMotionを使う図

―― 本作を今後上映する予定などはありますか?

冠木: 直近の予定では、新千歳空港国際アニメーション映画祭内で行われるICAF2014北海道会場で上映される予定です。他、ICAFの各会場で上映されます。9月に国立新美術館で開催されたICAF2014でも上映して頂きました。あと、6月30日に渋谷のclub asiaで行われた菅原さんのリリースライブで制作途中のショートバージョンが上映され、MV公開の導線としてMVに関連したTシャツも販売されました。

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―― 最後に、tampen.jp読者のみなさんへメッセージをお願いします。

冠木: 今まで自分で選曲した曲のアニメーションしか作った事が無く、初めての依頼をうけてのMV制作ということもあったので戸惑うことも多々ありましたが踏ん張りました。私の思う「お尻の穴収納」は本当に利点が多いと思います。そんな感じで観て頂けたらなと思います。これからも精進いたします。読んで下さってありがとうございました!

ものすごいボリュームで「アニメーション作品」と言うに相応しいMVですが、やはり4ヶ月間というそれなりの制作期間がかけられているんですね・・・。そして更に、今回は特別に、シンガーソングライター菅原信介さんからもコメントをいただきました!

菅原信介: ひょんなことで冠木佐和子ちゃんと出逢い彼女の超びっくりな才能とパワーによりこの曲がより「暗黒」に誘(いざな)われました。そしてそれは宇宙の暗闇ではなく、ブラックホールの先でもなく、まさかまさかの肛門の中にある「暗黒」でした。ミラクル!

冠木佐和子さん、菅原信介さん、どうもありがとうございました!


冠木佐和子
http://uykom.exblog.jp/

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菅原信介
http://sugaharashinsuke.com/

ライブ情報:
「菅原信介 恐怖の360°LIVE」
2014年12月16日(火)
OPEN 19:00 START 20:00
前売¥3,400 当日¥3,900 (D別)
会場:代官山LOOP