こんにちは。アニメーション作家の久保雄太郎と申します。tampen.jpでは少し前にオタワ国際アニメーション映画祭の記事を書かせていただきました。
【久保雄太郎のオタワ国際アニメーション映画祭2014体験レポート!】
http://tampen.jp/article/289
実はその後僕は日本に帰国せずにカナダに滞在しています。というより滞在させていただいています。毎年文化庁が行っている「新進芸術家海外研修制度」という制度があり、その制度を活用させていただき、滞在することが出来ています。
これまでに様々な分野の方がこの制度を活用し、海外で活動をしてきました。アニメーションの分野では、和田淳さん、大山慶さん、奥田昌輝さん、ALIMOさんなどがこの制度で海外研修を行ってきました。この制度についての詳しい内容は文化庁のHPでご覧になれます。
さて、という事で僕は現在カナダ、バンクーバーにて研修をしています。期間は1年間で、研修の内容をざっくりと言うと、作家、学生などへのインタビューを兼ねた情報収集、新作の制作です。そして今回ここで最近の活動内容をご覧いただけたらと思います。
まず最初に僕がお世話になっているエミリーカー美術大学(Emily Carr University of Art + Design)のことについて書きたいと思います。エミリーカー美術大学(以下エミリーカー)はグランビル・アイランドという小さな小島の中にあります。外観はこんな感じです。
反対側の校舎はこんな感じ。こちらには、大学の図書館も併設されています。また、図書館は一般開放されているとのことでした。
画材屋さんも入っています。
ご存知の方も多いと思いますが、エミリーカー美術大学はカナダの有名な美大の一つで、名前は芸術家のエミリー・カーに由来しています。
『ある一日のはじまり』のウェンディ・ティルビーさんとアマンダ・フォービスさんもここの出身。
グランビル・アイランド自体は大きな市場のようなマーケットがあったり観光客の多い場所です。大学が忙しい時は観光客が多いと少しうっとうしく感じると言っていました。僕が通っていた藝大のアニメーション専攻も観光地にあったので、なんだかすごくその気持ちが分かりました。観光客の方はなにも悪く無いんですけどね。
現在エミリーカーのアニメーションコースには1学年約50人の学生が所属しおり、コースの選択は2年次から。1年次では全て学生がデザインの基礎教育などを受けるとのこと。同大学大学院でもアニメーションを研究は可能ですが、現在アニメーションを研究している院生はいないようでした。なかなか大学院まで行く学生は少ないようです。アニメーションコースの常勤教授、講師は4人とのこと、その他の助手や非常勤などと一緒に学生の指導に当たっているようです。現在日本人学生は2名で2~3年に一人といったところのよです。
今回は研修で僕の引き受け先を快諾していただいた、マーティン・ローズ准教授と2名の日本人学生、果歩さんと航大さんが学校内をご案内してくださいました。校舎に入ると、まず最初にギャラリースペースがあります。学生が有志で展示をしたりしています。
そして、早速アニメーションコースの方へ。作画室です。全ての学年がこの部屋を使うそうで、ライトテーブルは早い者勝ちとのことです。課題の締め切り近くになると、埋まることもあるようですが、紙に手描きの学生に比べ圧倒的に3Dやデジタル作画の学生が多いため常にいっぱいということは無いようです。
この時は野菜を回転させるという課題をやっていた2年生数名がいました。
やはりみなさんタップ穴は下のようです。日本ではタップ穴は上が基本だと思いますが、地域によって違うって不思議ですよね。まぁ自分が描きやすければ上でも下でも横でも自由なのだけれども。
そしてこの角度を調整できるタイプ。かっこいいですよね。なんかプロっぽいですよね。机と一体になってるところがいいですよね。僕は猫背になりやすいので、どこかのタイミングで手に入れたいな~と思っています。個人的には、LDEライトのものがあったら一番いいですね。
こちらは、デジタル作業用の部屋。左端の男性がマーティン・ローズさんです。
この部屋には、でっかい液タブ(液晶タブレット)が結構ありました。3D、デジタル作画の学生にはかなりうれしいですね。僕は、東京工芸大学と東京藝術大学の2つ大学でアニメーションを勉強しましたが、在学当時液タブは無かったので少し驚きました。学生にとって大学の環境は一つの大事なポイントですよね。そう簡単に、PCや液タブなんかは買えないですからね。アナログでアニメーションを作っている学生でも、マスクを切るときなんかは、液タブがあるとすごく便利なので、もう液タブはどこの学校にも有るべきツールなのかなと思います。
授業中だった部屋もありましたが、この他にもいくつかPCルームがありました。
こちらは、レコーディングルーム。レコーディング中でしたが、少し見せていただきました。
撮影台もあり、数名の学生がカットアウトの作品を制作しているようでしたが、スペースがあまりないため、撮影後は毎回片付ける必要があり、こちらも早い者勝ちとのこと。どこの学校も暗室の確保はかなり大変のようです。また、パッペット用の暗室は無いようでした。
ちなみに手前の女性が果歩さん、奥の男性が航大さんです。
隣にはマルチプレーンカメラがありましたが、全然使われていないとのことでした。僕のいた大学でも似たような感じで貴重なことは分かっているのだけれども、なかなか使う学生はいませんでした。
ここは機材の貸し出しを行っているところで、かなり豊富な品揃えでした。とにかく広かった。
そして学食。学生からは高い割に美味しくないと厳しい意見でした。スターバックスが入っているのですが、中身はスターバックスのコーヒーじゃなくて、ただの茶色いお湯だと言っていました(笑)。でもサンドウィッチが500~700円くらい。確かに高い、、
写真を撮り忘れてしまいましたが、卓球台がありました。日本の大学はなかなか置いてくれなそうですが、リフレッシュになってとてもよさそうですよね。
他に珍しかった事はマグカップの貸し出しをしていました。誰でも自由に使っていいとのこと。写真は使用した後のマグカップ置場で使い終わったあとは廊下にある写真のような返却場所に返すそうです。中身は各自用意するようでした。あとロッカーがあるのですが、このロッカーはレンタルするとのことでした。値段は忘れてしまいましたが、全然高くは無かったです。でもレンタルって不思議な感じでした。
アニメーション以外にも写真や、プロダクト、油絵といろいろ見せていただきました。
後日、訪れた時にとても面白いことをやっていました。この日はピッチナイトというイベントが行われていました。簡単に言うと4年生が行う卒業作品のプレゼンです。プレゼンがあること自体はそれほど珍しいことではないと思うのですが、ここでプレゼンをする相手が先生ではなく、下級生なんです。下級生にプレゼンをして、下級生はプレゼンを見て面白いと思った作品の監督のところに行き話をして、話が合えばスタッフとして作品を手伝うそうです。
これはすごくいいシステムだなぁ~と思いました。学生は持ち時間の中で真面目にプレゼンしたり、ハリウッド映画の様な壮大な予告編をみせたり、資料をいっさい見せず、名乗った後言葉のみでプレゼンし、冗談を混ぜて沢山笑い取り印象を強めている学生もいました。
短編作品で個人で作っているとはいえ、アニメーションはどうしても時間がかかります。学生の作品とはいえ、スタッフを入れる人は沢山います。中には絶対に人には自分の作品を触らせたくない!という人もいるので、一概には言えませんが、多くの人がスタッフ集めに苦労します。もちろん皆一人で出来る限り完成させたいと思いますが、締め切りの関係で誰かに手伝ってもらう必要が出てきたりします。その時に時間を割いて手伝ってくれる人を捜すのは本当に大変です。人脈で探していくのが一般的だと思うのですが、エミリーカーの様にプレゼンをし、気になった作品の所に行くっていうのは、とても効率的でいて、下級生にとっても自身の卒業制作のイメージを掴むのにとても良いように思います。また、スキルアップにもつながると思います。現に、3Dの作品が作りたいからあの人のとこ行こうかな~みたいな感じのようでした。そして、もう一点このシステムのいい所は、スタッフを見つけると同時に、人を引き付けるためにプレゼンをする必要性があるところです。大学で教授に向けてプレゼンするよりも、より実践的な機会のように思えました。
全員のプレゼンが終わると一斉に散らばり、各々が気になった作品の監督と話していました。
エミリーカーの話はざっとこんな感じなのですが、アニメーションの話だけってのも何なので、少し関係ないところも。
牡蠣です。
僕は牡蠣が大好きです。そしてバンクーバーは牡蠣が安い!普通は1つ300円くらいですが、ハッピーアワー(大体夕方6時まで)の時間帯は100円~150円で食べられます。海が近いこともあってすごく美味しいです!料理は嫌いじゃないので、基本的には毎日自炊をしていますが、今日は!と思って牡蠣を食べに行って思いっきりたべても3千円くらいですみます。牡蠣好きにとってはとても嬉しい事です。
次はホウキです。
完全に空が飛べます。
このお店はエミリーカーのすぐ近くにあるのですが、ホウキ専門店です。僕はホウキが欲しいと思った事は無かったのですが、なんかホウキ欲しいなぁ、と思ってしまいました。その他にもエミリーカーの近くにはおしゃれなお店やかわいいお店が沢山あり、校舎のすぐ裏には、お金持ちが住むらしい海に浮いた家がありました。
是非バンクーバーに来られた際は牡蠣やホウキを楽しんでみてはいかがでしょう。バンクーバーでは毎年9月末~10月頭にかけてバンクーバー国際映画祭も行われています。
今年は、日本から沢山参加していました。左から藝大同期の中野咲さん、現在藝大修士2年の円香さん、アニメーション作家の斉藤俊介さん、映画祭に参加していた中国人作家さん、現在藝大メディア専攻修士1年の薄羽涼彌さんが参加されていました。
その他にも会場には来られていませんでしたが、佐藤義尚さん、冠木佐和子さん、山田遼志さん、中島悠喜さんが参加していました。とても大きい映画祭で上映もほぼ満席でした。是非、来年応募してみてはいかがでしょう。そしてついでに牡蠣をどうぞ。
文化庁・新進芸術家海外研修制度
http://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/05kenshu/
Emily Carr University of Art + Design
http://www.ecuad.ca/http://www.ecuad.ca
久保雄太郎(vimeo)
https://vimeo.com/yutarokubo
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