こんにちは、tampen.jp編集長の久保亜美香です。
2014年11月11日(火)から16日(日)まで、ドイツの首都ベルリンで開催された国際短編映画祭「Interfilm」に国際審査員として参加してきましたので、今回はその様子をお届けします。

1982年に始まったInterfilmは今回、30回目の記念年として開催されました。
実写もアニメーションもフィクションもドキュメンタリーも全て混ざった「短編」映画祭で、尺の規定は1作品20分以内。今回は約630作品が上映され、来場者は2万人を記録するという、大規模で、ドイツ・ヨーロッパのみならず世界でも重要な短編映画祭です。

30th International Short Film Festival Berlin from interfilm Berlin on Vimeo.

わたしがベルリン・テーゲル空港に到着したのは11月11日(火)夕方、映画祭開会式が始まる3時間ほど前でした。空港には映画祭からドライバーさんがお迎えにきてくれています。今回は審査員としての参加なので、映画祭中はどこへ行くにもこの車で送迎してもらいます。

開会式は21時という遅い時間から。ベルリンの中心であり中枢を担うミッテ区にある映画祭会場のひとつ「VOLKSBÜHNE」で行われます。100年前、1913年から1914年にかけて建てられた劇場です。いまだに読み方が判りませんが、英語では「People's Theatre」という意味だそうです

受付で手首にバンドを巻いてもらい、入場。

会場に入ると審査員のための予約席が用意されていて、そこに案内されます。ここで他の審査員やスタッフ、フェスティバルディレクターに初めて会い、しばらく談笑。

映画祭での公用語は英語。審査員は世界中から集まっています。

紙が貼られているのが我々の席。開会式の途中で登壇するため、端の席です。

会場は満席。開会式が始まり、審査員の紹介で登壇。ひとりひとり、挨拶を求められました。下の写真一番左が私です。

この時点では審査員が全員揃っておらず、私が務めるインターナショナルコンペティションの審査員も4人中2人が未到着でした。

開会式では、ベルリン在住の日本人アートユニット「ウサギニンゲン」のライブパフォーマンスがありました。

開会式が終わるともう23時過ぎ。そこからオープニングパーティーが始まります。わたしはフライトで疲れていたので一通り挨拶を済ませて0時にはホテルへ。パーティーの様子はこんな感じだったそうです。BAR・・・?

今回宿泊したホテルは映画祭会場から徒歩7分ほどの場所に位置する「Myer's Hotel」。映画祭公式ホテルで、期間中は他にも映画祭関係者がたくさん宿泊していました。

簡単に歩ける距離だったので、日中は車での送迎を断って散歩がてら歩いて行き来しました。

翌日、映画祭2日目。11月のベルリン、今年は暖かかったそうで7度くらいの気温の中、最初の審査員ミーティングへ向かいます。滞在中はずっと曇りか小雨でした。下写真はホテルの前の道。

会場近くにテレビ塔がありますが、天辺は雲の中。信号機はアンペルマン、旧東ドイツの歩行者信号機で使われていたマークで、現在はドイツ各地で使用されているシンボル的存在です。人気のアンペルマンショップですが、実は神宮前をはじめ、日本各地に出店しています。

ミーティング会場はVOLKSBÜHNEに併設された「レッドサロン」だったのですが、不穏な雰囲気の入り口に戸惑います。え、ここ・・・?

入り口に近づくと「Interfilm」と書かれたアンペルマンがお出迎え。ここであってるみたい。

「レッドサロン」はその名の通り、真っ赤な部屋。審査員ミーティングで映画祭の説明を受けます。大まかなスケジュールくらいしか聞かされていない状態で来ていたので、ここで初めて全容をつかみます。

このミーティングで、映画祭公式バッグをもらいます。アンペルマンがスポンサーになっているので、バッグも中身もアンペルマンだらけ!他には映画祭のカタログや審査に使えるメモ帳、ライト付ペンなどが入っていました。

ミーティングが終わると、映画祭メイン会場である「BABYLON」に移動します。バビロン。VOLKSBÜHNEは読み方が判りませんでしたが、バビロンは判るのでバビロンと表記しますね。

映画祭期間中の上映は複数の会場で行われますが、我々が審査するインターナショナルコンペティションは全てバビロンでの上映になります。ちなみに、インターナショナルコンペティションはこの映画祭でメインとなるコンペティション。グランプリが映画祭最高賞となるので、審査員は責任重大です。

バビロンの入り口に受付があります。我々はパスを持っているので出入り自由。

2階に審査員席があります。一般客が入ることができないのでまるでプライベートシアター。今回は審査で全8プログラム66作品を鑑賞しましたが、この審査員ブースのお陰で快適でした。

また、続き部屋にはPCが設置されており、ここでノミネート作品を鑑賞することができます。審査員が作品を見直したり、見逃した作品を補うために、どの映画祭にもこのシステムが用意されています。

さて、これから審査開始!この時点で審査員は4人中3人が揃っていました。よくあることです。こういう時のための、上記システムです。

プログラム開始前に毎回流れるフェスティバルのジングルには、審査員の名前も入っていてなんだかカッコイイです。しかし浮かれてはいられません、ただでさえ忙しいスケジュールの中、後から見逃し補完システムを使うことになるのは嫌なので、1作品1作品集中して観ます。

14時半からと16時半から、2プログラムを鑑賞した後、審査員とスタッフで夕食へ。例のごとく車で連れて行かれるので、場所は不明です。

ここで審査員メンバー4人目が到着!やっと全員そろいました。

その後バビロンに戻り、22時半からもう1プログラム・・・この日の審査が終了したのは深夜0時。毎日こんなスケジュールでくたくたでした。

映画祭3日目、11月13日(木)。この日は在ドイツ日本大使館に昼食に招かれました。今回のInterfilmでは日本特集プログラムが組まれており、日本人監督が多く参加していましたので、日本人参加者の昼食会です。食事の後、気付いたら審査プログラム開始10分前・・・!大慌てで車を出してもらい、フェスティバルディレクターと一緒に私だけ先に会場へ戻りました・・・が、遅刻して1作品見逃してしまいました。こういう時のための見逃し補完システムです。

やっと揃った今回の国際審査員メンバー。

右から、フィリピン映画界の重鎮である映画監督Raymond Redさん、オデッサ国際映画祭(ウクライナ)のエグゼクティブプロデューサーJulia Sinkevychさん、ホーランドアニメーション映画祭(オランダ)のフェスティバルディレクターGerben Schermerさん、私、です。

映画業界の中心で活躍する彼らと映画祭期間中ずっと共に行動し、たくさんの会話を交わすことができたのは本当に貴重な経験でした。

この日も14時半からと16時半からの2プログラムを審査。その後、日本と同じく特集プログラムが組まれていたノルウェーのレセプションに参加しました。

そこで振舞われた巨大プレッツェルを齧りながら・・・3プログラム目の鑑賞です。他のメンバーもレセプションで振舞われたワインを片手に。くつろぐ審査員たち。

監督が来場している場合、作品上映後に監督の紹介と質疑応答が行われ、会場のお客さんからも盛んに質問が飛んできます。作品鑑賞後すぐに監督と話ができるのはとても良いです。

20時半からのプログラム審査が終わり22時過ぎ、この日もここから夕食です。車で映画撮影現場裏のような謎の場所に連れて行かれましたが、中に入るとモダンでお洒落なレストランでした。

映画祭4日目、審査最終日。
この日最初のプログラム審査中に、隣室では日本人監督のインタビューが行われていました。実写映画監督がほとんどでしたが、アニメーション映画監督としては岡田拓也さんが参加されていました。私も参加予定とされていたようですが、完全にダブルブッキングです・・・残念ながら審査を優先しました。

1プログラム観終わって出ると、レセプションが始まっていました。大使とフェスティバルディレクターが鏡開きを行った後、審査員メンバー達が前日から楽しみにしていたのはここで振舞われる「Sushi」と「Sake」です。本当に日本食は人気ですね。

少しレセプションに紛れ込んだ後、20時半からの最終審査プログラムを観るために会場に戻ります。お寿司とお酒を手に・・・まるで自宅映画鑑賞。

こうして全8プログラム、66作品を観終えた我々。時刻は22時ですが、この後待っているのが大仕事、受賞作品選出です。審査会場へと向かいましたが・・・そこは巨大クラブ。会場は見る間に照明が落ち、テーブルが片付けられ、ダンスフロアと化しました。1段高くなっている我々のソファーテーブル席は取り残され、映画でよくみる悪役のようになっていました。

さすがにここでは話にならない、ということでとりあえず夕食だけ済ませて移動。場所をアチコチ探しましたが、金曜夜ということでどこも一杯・・・途方に暮れる人々。私は全く土地勘が無く役立たないので大人しく決定を待っていました。

結局、我々の宿泊先であるホテルのミーティングルームで話し合うことになり、午前3時までかかって受賞作品を選出。

翌、11月15日(土)。やっと一息つける日が訪れました。が、この日は映画祭が日本人参加者を昼食に招待してくれていたのでお昼前にレストラン「Hofbräu München」へ。

ビールブランドのようで、オリジナルビールとドイツ伝統料理があります。基本的にお肉とジャガイモです。

これまで審査員のスケジュールで一杯だった私。この日はせっかくのなので日本プログラムのひとつを観に行きました。会場は「グリーンサロン」。レッドサロンと対極に位置する、緑の部屋です。

会場は満席で、日本から来場した監督の皆さんが各作品上映後に挨拶をしていました。この夜は映画祭のパーティーがあったのですが、日本人参加者で気兼ねない日本語夕食会をしました。

そしてついに映画祭最終日の日曜日。

受賞作品は決まっていたものの、発表時に添えるコメントを考えていなかったので、カフェでプチミーティングです。

インターナショナルコンペティションに於ける賞は、グランプリ、ベスト実写、ベストアニメーション、ベストカメラ、の4つだったので、ちょうど我々4人で各賞の発表を一人ひとつずつ担当することにしました。わたしの担当はベストアニメーション。

他にも、映画祭からはスペシャルメンション(特別賞)を3作品以内程度で選出してもよい、と言われていたのですが、我々の方針でこれは選出しませんでした。

いよいよ会場に移動し、閉会式準備です。

まずは少し先んじて併催されたKUKIフェスティバルの授賞式、そしてInterfilmの各賞が次々と発表され、最後が我々の出番。メインコンペティション受賞作品の発表です。

最高賞であるベストフィルム賞は、『HABANA監督のEdouard Salierさんはパリ在住フランス人だったので、受賞式に駆けつけてくれました。この作品はベストカメラ賞も受賞。

わたしが発表したベストアニメーション賞は、Tomek Ducki監督Laznia (Baths)。今年のアニメーション映画祭常連作品ですが、コンセプトとその描き方が秀逸で、アニメーションもとても上手な作品です。

発表する私。監督の来場を誰も知らず、驚くという一部始終動画です・・・

最後に審査員と受賞者のフォトセッションをして、閉会式は終了。この後、全ての受賞作品が上映されます。そういった準備のために、受賞作品選出は前々日に行われるのです。

閉会式終了後に、受賞監督とお話ししました。こんな風に作品や制作者との距離が近いのが映画祭の楽しいところです。

更にこの後、付近のバーで最後のパーティーが明け方まで行われ、今年のInterfilmは幕を閉じました。

実写とアニメーションの入り混じる映画祭に参加することは、普段の生活では出会わない作品を知ることができたり、全く異なるつくりの作品を連続鑑賞することで新しい発見をすることができたりととても有益です。今回は実写映画監督さん達ともお知り合いになれて世界がぐっと広がりました。

最後に、映画祭公式「今年のInterfilmドキュメンタリー」を掲載しておきます。

Photos and Videos by Interfilm


今年1月にtampen.jpを開設してから、たくさんの作家さんにご協力いただき、様々な国の映画祭レポートをお届けしてまいりました。アニメーション作品は毎日のように世界中で上映されており、日本の作品も世界中の人々に楽しまれています。その業界のコアな場所に居ないとなかなか参加する機会もないかもしれませんが、映画祭は誰にでも開かれたイベントです。そこにはモニター越しに観るのとは違う、インタラクティブな世界が広がっています。みなさんも是非参加してみてはいかがでしょうか。

「短編アニメーション」のある新生活を、あなたにも。
2015年もtampen.jpを、どうぞよろしくお願いいたします。


30th International Short Film Festival Berlin
http://www.interfilm.de/en/festival2014/home.html

久保亜美香
https://vimeo.com/amica


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