2014年8月21日~25日まで行われていた、第15回広島国際アニメーションフェスティバルも、先日盛況にて閉会しました。過去最大となる74の国と地域から寄せられた2217作品から、たった1作品のグランプリも決定。会場を大いに沸かせました。準備編開幕編に続く今回は、日本にふたつしかない米アカデミー賞公認である今映画祭の、期間中の展示やイベント、そして遂に決定したグランプリ作品・受賞作品の総まとめ、そして閉会式の模様をロング・レポートします!


フェスティバルの花形は、もちろん多数の上映プログラムにあります。全部で3つのホールに跨り、5日間の日程で50以上のプログラム、500作品を超えるアニメーションが上映されます(ざくっと計算しました)。しかし、アステール・プラザで行われる企画は、これだけではありません!

例えば、1階の入り口すぐ左手の場所では、国内の主要なアニメーションの教育機関が合同でブースを構える「エデュケーショナル・フィルム・マーケット」があります。全国の、そして広島圏内の美術大学、専門学校、さらにはコンペティション関連、一部企業が軒を連ね、中央の小さなステージでは期間中、トークショーや作品上映がひっきりなしに行われていました。

そして注目すべきは、「フレーム・イン」「ネクサス・ポイント」の存在です。「フレーム・イン」は1994年の第5回大会から、「ネクサス・ポイント」は2004年の10回大会から、それぞれ無料で使用することが出来る「“作品持ち込み”の場」として提供されてきました。

まずは、「フレーム・イン」。こちらは主に、プロを目指す若いアニメーション作家たちのために開かれている場所です。事前に予約しておけば、作品審査もなしで無料上映、さらに張り付きの担当者の方に作品講評もして頂けるというものです。私もまた、プロフェッショナルを目指す若者でございますから、せっかくなので自ら申請してまいりました!


(※写真は「ネクサス・ポイント」の時のものです ごめんなさい)

まずは受付で、この日この時間に、と書類一枚をその場で記入し、予約完了。あとは予約した時間に、DVDを持ち込むだけです。ちなみに会場ではDVDとVHSでの再生のみ可能で、Blu-ray等は使用不可でした。わたしは、大学卒業後に制作した拙作『荒波 -LOVE LETTER-』『むすんで ひらいて』の2作品を選びました。

観客は(上の写真の後、もう少し入って)8~10人ほどでしょうか。受付にいらしたスタッフの方も、後ろで見守って下さっていました。ちょっとミスしてしまったのが、どちらの作品も尺が長く、一人当たり30分の持ち時間ギリギリになってしまったこと。結局、時間内に講評を頂くことができず、一言・二言のコメントのみとなりました。上映終了後、改めて先生の方にはコメントを聴きに伺いましたヨ。

続いて、「ネクサス・ポイント」。こちらは既にプロのための作品持ち込みの場所。自作や自企画のプレゼンテーションを通じ、主にビジネスについての来場者・出展者交流に焦点を当てたとしたものになっています。こちらのほうが会場としては狭く、観客も「フレーム・イン」よりは、すこし多めの印象でした。私もまた、プロフェッショナルに半分足を突っ込んでいると言えなくもない若者でございますので、もちろん申請してまいりました。

こちらでは、私はDVDのメニュー機能を使って作ったプレゼンテーション資料を制作し、持ち込み。残念ながら、上映後も特にビジネスな方に話しかけられることはありませんでした。来場者も、おそらくは一般のお客さんが多かった印象です。上映機会が増えるのはよいことですが、どちらかと言えば若い方なら「フレーム・イン」かな、とも思いました。

しかし、何よりもぶったまげたのが(“驚いた”を超えた衝撃でしたので、少々乱文失礼致します)、エレベーターにいつの間にか貼られていた「沼田友のショートアニメーション」の告知ポスター! これ、ぼく、書いていません! スタッフの方がきっと作って下さったのでしょう。会場内で3箇所くらい見かけました。感激です。ここに限らず、広島のスタッフは本当に皆さん優しくて、素晴らしい方ばかりでした。ここは強く強く申し上げておきたい箇所です。この場を借りまして、深く御礼申し上げます。本当にお世話になりました。

また別会場では、コンピューター・アニメーションやコマ撮り、ねんどアニメや「おどろき盤」、作画用紙などなどを使った作品をアドバイスを受けながら作ることが出来るワークショップも行われ、多数の方で賑わいを見せていました。

展示コーナーでは、特別プログラムも組まれたノーマン マクラレン生誕100周年記念展や、広島大会設立30周年記念特別展、そして今大会の特集国となるハンガリー展も開かれていました。特に30周年記念特別展では、展示されている各大会のスナップ写真に、さらにポストイットで新たなコメントが書き加えられていくという、ユニークな試みも!

そして2階のホール前では、様々な大会・作家関連の出店が軒を連ねていました。大会関連グッズや世界のアニメーション、日本の優れたアーティストたちのDVDやグッズ、原画などが即売されています。会期中は、作家の突発的なサイン会も開かれるなど、活気に満ちたものになっていました。


……さて、8月25日(月)17時すぎの2階ホール前は、異様な熱気に包まれていました。つい先ほどまで行われていた最後のプログラム『現代日本のアニメーション』が終演し、大ホールから吐き出されてきた観衆と、これから始まる――5日間の日程の最後を飾る表彰式閉会式の開場を待つ人々が、それぞれ入り混じりながら、その時を待っていたからです。

18時過ぎ、第15回広島国際アニメーションフェスティバル表彰式閉会式が始まりました。

HIAF2014の主要賞は、全部で4つ。「グランプリ」「ヒロシマ賞」「デビュー賞」、そして「木下蓮三賞」。さらに来場者の投票で決定する「観客賞」と、「国際審査員特別賞」「優秀賞」が数作品づつ選ばれます。

ひとつひとつの作品が審査員や担当者から読み上げられる度に、拍手、そしてどよめき。ステージ上には10人以上の作家たちが登壇してゆきました。

そして遂に発表された、今年のグランプリ作品は、何と学生作品でした!

第15回 広島国際アニメーションフェスティバル グランプリ『THE BIGGER PICTURE』(Daisy Jacobs)

壁に描かれた登場人物と、実際に作られているセットの家具などが組み合わされた、実物と絵画アニメーションが融合した不思議なビジュアル。そして老いを迎えた母とふたりの息子の関係を描く物語は、コンペティション作品でも特筆に価するものでした。

そのほか、今年の受賞作品はこのような感じ(上から、ヒロシマ賞デビュー賞木下蓮三賞観客賞)。ひとつ残らず面白いものでしたので、皆さん、要チェックです。特に、観客賞の『ノー タイム フォア トウズ』はフル尺でアップされているので、良い飲み物とリラックス出来る椅子を用意して、秋の夜長にゆったりと楽しみましょう(会場の上映では、常に暖かな笑いで満ち溢れていた作品です)。

この後、閉会式に続き、今年の受賞作を特集上映。さらに、昨年末に亡くなった巨匠フレデリック・バックの追悼として『クラック!』が事前告知なしで上映されました。


こうして、5日間に渡るフェスティバルの全日程が終了しました。終演後の会場では、別れを惜しむ観客たちの姿がそこかしこに見受けられました。遠くからやって来た昔からのファン、作家たちに加え、何人も仲間を連れて訪れた学生たち、そして現地でこのイベントを守り続けている、あるいは楽しみ続けている広島市民の皆さん。沢山の方に支えられ、そして愛されて、イベントは2016年の第16回大会開催までまた一旦眠りにつくことになります。

作品上映もさることながら、筆者が一番印象に残ったのは、やはり「市民映画祭」であるという側面。広島市公務員から多数のボランティア、そしてアニメーション関係者で構成される運営は手作り感があり、そして非常に丁寧な扱いがなされていました。「フェスティバルの熱気」という点では、規模は決して大きくはありませんが、30年間守られ続けているイベントの一端を確かめることが出来ただけでも、赴く価値はあったように思えます。応募する方も、参加される方も、また2年後、広島でお会い出来るといいですね。

ああ、長かった。こちらをもちまして、レポートを終了させて頂きます! (お付き合い頂き、ありがとうございました)


第15回 広島国際アニメーションフェスティバル 公式ウェブサイト
http://hiroanim.org/

開催日:2014年8月21日~25日

会場:アステールプラザ
http://www.cf.city.hiroshima.jp/naka-cs/

期間中上映プログラム多数
詳しくは公式サイトをご確認ください。