前回、オリジナル作品『Between Times』とアメリカのインディペンデント作家の活動の様子について興味深いお話をしてくださった、アニメーション作家ユニット「Tiny Inventions(タイニーインベンションズ)」の桑畑かほるさん。今回は、今年8月末からの巡回開始に関わらず、すでに世界30以上の映画祭で上映され好評を博している最新作『Perfect Houseguest』についてのインタビューです。
拠点をアメリカに置きつつも、制作やその資金調達のために世界中を飛び回っている桑畑さん、今回もとても刺激的なお話を聞かせてくださいました。まずは全編がWeb公開されている『Perfect Houseguest』をご覧ください!
―― 『Perfect Houseguest』は、どんなお話ですか?
桑畑:整理整頓が大好きでお行儀の良い、完璧なお客様が訪ねてきたお話です。
―― お話を思いついたきっかけは?
桑畑:去年まで借りていたアトリエにネズミが大量発生しました。(そして、それがこのアトリエを去った理由です)ある日、セットの中にフンを発見し、「きちんとトイレに行って、制作を手伝ってくれるネズミだったら大歓迎なのにねー」と言った事が制作のきっかけです。
―― 本作の制作過程もTiny Inventionsのブログに記録されているのでしょうか?
桑畑:はい、制作経過が少しブログに載っています。
http://www.tinyinventions.com/blog/?cat=20
実はこの作品は2〜3ヶ月で終わらせる予定で(実際は他の仕事や学校の関係で、8ヶ月近くかかりましたが・・・)あまりメーキング用の写真など撮らなかったのです。
―― 本作はどこまで実写でどこからCGなのでしょう?
桑畑:背景は全て実写(私たちのアパートです)、キャラクターや小物(ほうき、ハシゴ、ドアなど)はCGです。ストップモーションはスパイスくらいです。前作『Between Times』に比べてCG要素が増えました。
※『Between Times』制作に関するインタビューはこちら
どこからが現実…?Tiny Inventions桑畑かほる監督インタビュー1:アメリカの作家事情と『Between Times』
写真:パペットを設置して影を確認。このあとこの写真を元にCGキャラクターに影を付ける。
―― 制作資金調達やプロデューサー確保など、世界中に目を向けて動いているそうですね。
桑畑:今年の始めにフランスで開催の Clermont-Ferrand Short Film Festival のピッチ(企画プレゼンテーション)に参加しました。これは脚本協会が主催しているもので、長編と短編の脚本を持ち込んでプロデューサーを見つけるという企画です。
次回作はまたヨーロッパで制作したいと考えていたので、このピッチのコンペに通ったのは第一歩でした。実際に気の合うプロデューサーに出会えたのですが、やはり外国人である事と、制作資金が0ということで思うように前に進めませんでした。
ある程度の資金調達をすればプロデューサーも話が進めやすいと聞いたので、Ciclic というレジデンシーを兼ねた助成金に応募した所、半分以上の制作資金が手に入ったので、めでたく正式にそのプロデューサーと契約が出来て、彼女が現在残りの資金調達に奮闘中です。
そして色々と助けてくれたのが現在教えている美大(メリーランド美術大学)の学部長(フランス人)です。オランダでのレジデンシーも、ロシア・ウクライナの映画祭KROK で会ったイスラエル人の監督Uri &Michelle Kranot に薦められました。作品を信じて助けてくれる人は必ずいますし、お金がある所にはあります。常にアンテナを張って、チャンスを見逃さないように心がけています。待っていても何も来ないので。
写真:Clermont-Ferrand Short Film Festivalでのピッチの様子。
―― 気になる次回作は?
桑畑:来年から半年間、フランスで制作してきます!2016年、冬の完成を目指しています。
画像:新作のカラースクリプト。実際はストップモーションの作品になる。
―― アニメーション制作の他にはどのような活動をしていますか?
桑畑:2週間に1話のペースでマンガを自主連載しています。アニメーションは時間がかかるので、ささっと出来上がる作品作りに興味が湧きました。日々のくだらない事や、昔の思い出などを記録・保存するという意味で『ピクルスの瓶』という題名です。公式ブログなどの他に、facebookとtwitterにも掲載しています。
公式サイト:http://www.tinyinventions.com/main/pickle-jar/
tumblr.:http://tinyinventions.tumblr.com/
―― 最後に、tampen.jp読者の皆さんに一言お願いします!
桑畑:長々と読んで頂きありがとうございます。映画祭などで見かけたら声をかけてください!
***
2回に渡りお届けした桑畑さんへのインタビュー、いかがでしたか。インディペンデント作品制作が難しいのはどこの国でも同じですが、居住国以外にも目を向けることで可能性や活動の幅を世界へと広げる彼女の努力やアクティブさには脱帽ですよね。海外で企画プレゼンテーションや制作をする機会があるということを知らなかった方も多いのではないでしょうか。是非参考にしてくださいね。
桑畑かほるさん、貴重なお話をどうもありがとうございました、次回作も楽しみにしています!
『Perfect Houseguest』
監督、シナリオ、デザインアニメーション、カメラ:Max Porter and Ru Kuwahata
作曲、サウンドデザイン : Bram Meindersma
ミュージシャン: Simone Aarnink, David Beukers & Tymen Bergman
CGリギング: Brian Horgan & Will Walker
受賞・ノミネート:
ASIAGRAPH 2015 優秀賞、Encounters Film Festival(イギリス)、Krok Animation Festival(ロシア/ウクライナ)、Milano Film Festival(イタリア)、Anim’est(ルーマニア)、 Chicago International Children’s Film Festival (米国)、 Monstra (ポルトガル)、札幌国際短編映画祭など
Tiny Inventions
http://www.tinyinventions.com/main/
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