ピチピチな若手作家さんのニュースの隙間に、こんな上映会の話題をぶっ込んでみるとしましょう。

日本アニメーション界の始祖である政岡憲三大藤信郎のアニメーション作品を、いずれもデジタル復刻した上映会が、2月8日に東京国立近代美術館フィルムセンターで行われます。全作、35mmプリントでの上映です!

ラインナップは全3作品。まずは日本アニメーションの父と呼ばれる政岡憲三(1898-1988)の代表作『くもとちゅうりっぷ』。初公開はナント太平洋戦争中である1943年! 71年前のアニメーション作品が現代に鮮明に甦ることになります。

『くもとちゅうりっぷ』は松竹初のアニメーション作品であり、当時はまだ貴重だったセル画を全面導入した意欲作。その優れた技術力と作品性から、文字通り日本アニメーション史に残る傑作とされています。一方でいま鑑賞してみても、小さな葉や茎の上をコロコロと動き回るてんとうむしの可愛らしさや、後半の大嵐のシーンの迫力は、まったく色褪せてはいません。すごく素敵なアニメーションです。

そしてもう2作品が、日本の自主制作アニメーション史上に残る伝説の人物である大藤信郎(1900-1961)の代表作。現在では毎日映画コンクールの大藤信郎賞(優れたアニメーション製作者に贈られる)でその名を知る方もあるかもしれません。

戦前・戦中の漫画映画(アニメーション)の多くはセル画を用いたものではなく、切り絵・影絵を用いたものがほとんどでした。大藤はその中で江戸千代紙を素材とした切り絵アニメーションを考案。数多くの作品を残します。しかし戦後、セル画のアニメーション映画が主流となると、大藤は世間からの注目を閉ざされるようになりました。

その中で大藤は、カラーフィルムを用い、色セロファンを素材とした影絵アニメーションをほぼ独力で自主制作。今回の上映作である『くじら』は、1953年のカンヌ国際映画祭短編部門で第二位となり、鑑賞していたパブロ・ピカソ(あのピカソですぞ!)に絶賛されるという高い評価を獲得。一躍その名を取り戻したのです。

今回デジタル復刻されるのは、その『くじら』と、『くじら』での技術をさらに深化させた『幽霊船』の2作品。半世紀以上前に制作されたインディペンデント・アニメーションの力を、ぜひご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。

古典を観に行くつもりで、ガツンと衝撃を受けたいぜ! という方にもお奨めです。上映は2月8日(土)のみで、お昼12時と15時の2回。料金は一般500円、学生300円他。発券・開場は各回上映の30分前で、定員次第締め切りとなります。ちなみに、東京国立近代美術館フィルムセンターの最寄り駅は東京駅ですヨ!


政岡憲三・大藤信郎アニメーション作品
デジタル復元版特別上映会(小ホール)

2014年2月8日(土) 小ホール(定員151名)
0:00PM / 3:00PM [英語字幕つき] 各回入替制
※各回上映前に、研究員による復元に関するトークあり。

料金=一般500円/高校・大学生・シニア300円/小・中学生100円
障がい者(付添人1名含)・キャンパスメンバーズは無料
発券=地下1階受付
発券・開場は開映の30分前から行い、定員に達し次第締切。
学生、シニア(65歳以上)、障がい者、キャンパスメンバーズ利用の際は証明証などを提示。
発券は各回1名につき1枚のみ。
観覧券は当日・当該回のみ有効。

※開映後の入場はできません。

詳細:
http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2014_special_animation/index.html

東京国立近代美術館フィルムセンター
http://www.momat.go.jp/FC/fc.html