アニメーション作家グループZENTOY(ゼントイ)の作品『獅子として生きる』が、今年9月にカナダで開催されたオタワ国際アニメーション映画祭2015(OIAF)のShort Films Made For Kids Competition(子供向け短編映画部門)に入選!
今月7日から開催中の第10回札幌国際短編映画祭のオフシアター(シアターキノ)でも上映されました。

動画配信サイトで企画会議の様子を中継したり、関連グッズを販売するなど、作品制作のみにとどまらない総括的なセルフプロデュースを積極的に行っている点で一歩先行くZENTOYとは・・・今回は『獅子として生きる』のディレクターを務めたZENTOY長崎悠(ながさきゆう)さんにお話を伺いました。

まずは『獅子として生きる』をご覧ください!

―― ZENTOYについて教えてください!どんなチームなんですか?

長崎:ZENTOYは2015年現在、長崎悠、永野やよい(ながのやよい)、蓑田裕久(みのだひろひさ)、野田博史(のだひろし)の4人のメンバーで活動しています。役割としては、長崎が監督とアニメーション制作、永野が3DCGワークとアートディレクション、そして蓑田と野田がストーリーを担当しています。

活動の始まりは、僕と高校時代からの友人である野田との、ささいなメールのやりとりから。アニメーションを作ろうとか、そういった具体的な目的があったわけではなく、思いついたアイデアを互いに送りあうというところからスタートしたんです。結果として、『SAMURAI NOW』という作品ができあがったんですが、2人で考えてると、どうしても偏った作品になってしまうなと。そこで、もっと斬新なアイデアをだしてくれそうなメンバーとして、高校時代の友人である蓑田に声をかけ、さらに、作品全体をぎゅっと引き締めてくれる永野に加入してもらって、今のゼントイとなっています。今はとてもバランスが取れていると思います。


写真:オタワ到着直後のZENTOY4人(左から蓑田さん、長崎さん、永野さん、野田さん)

―― ZENTOYという名前の由来は・・・

長崎:ZENTOYの名前は「禅」+「TOY」からきています。禅の根幹である捉われない心をもって(=ZEN)、子供たちに楽しんでもらいたい(=TOY)という思いを込めて、ZENTOYと名づけました。今思うとZENJOYの方が分かりやすかったですかね(笑)。


写真:OIAF恒例カボチャ彫り大会に参加する蓑田さん

―― 今作『獅子として生きる』について教えてください!

長崎:ZENTOYの活動実績として、1作目の『SAMURAI NOW』、2作目の『SUMO ROLL』があり、今回、3作目となる『獅子として生きる』を制作しました 。

『獅子として生きる』は、大富豪の家で暮らしている子ブタのベンジャミンが、ひょんなことからアフリカのサバンナで、ライオンとして生きていくという作品です。この作品は、ZENTOYメンバー全員でそれぞれ複数の企画を出し合って、その中から選んだ作品です。原案の段階では、獅子ではなくて、『 牛として生きる』 だったんですよ。食肉用に育てられたブタが、生き残りをかけて、必死で乳牛の姿を真似るといった内容でした。ただ、様々な面でサポートいただいている曽利文彦監督に意見を求めたところ、「牛も結局たべられちゃうよね」と。確かにそうだなって(笑)。

ただ、子ブタが自分の宿命に真剣に立ち向かうというアイデアは、とても勇気がでるし、真剣であればあるほどコミカルな作品になるんじゃないかと思って、あらためて練り直しました。結果として、子ブタと真逆の百獣の王のライオンとして生きてもらうことになりました。主人公のベンジャミンからすると、牛よりもさらにハードルが高くなって大変でしょうが、ぜひ、サバンナでライオンとしてたくましく育ってほしいですね(笑)。


画像:原案のベンジャミン、牛の格好をしていた

画像:コンセプトアート(上)と、実際の作品スチル(下)

―― そしてオタワ入選・・・映画祭に参加されて、どうでしたか?

長崎:本作は、曽利監督をはじめ、様々な方々の協力を得て、ようやく完成することができました。沢山の方に協力して頂いた作品なので、より多くの人に見てもらえないかと国内外の映画祭にエントリーし、オタワ国際アニメーション映画祭2015にノミネート、ありがたいことに子供向け短編アニメーション部門で、準グランプリをいただくことができました。協力いただいた方々に少しでも恩返しができたかな思っています。

映画祭では、他の子供向けアニメーションをたくさん見せてもらいました。全ての作品がとてもレベルが高く、子供を楽しませるために本気でつくられた作品ばかりだと感じました。『獅子として生きる』も分かりやすい作品にしたつもりでしたが、他の作品に比べると、いろいろと反省するところがありました。どうしても間を恐れてしまうところがあるというか。このへんも次の作品づくりにつなげていければと思います。


写真:OIAFのMeet the film makersで子供審査員から鋭い質問を受ける

―― 『獅子として生きる』の今後の展開予定を教えてください!

長崎:『獅子として生きる』は、いまニコニコ動画とYouTube、vimeoにていつでも見られるようになっています。実は『獅子として生きる』は全13話のシリーズ作品として企画したもので、今回の作品はその第1話となっております。2話以降の脚本はすでに出来上がっており、企画をだした2009年から7年間もベンジャミンたちとつきあってきてますので、ぜひシリーズ化を実現させ、ベンジャミンたちにもっと活躍してもらいたいですね。ベンジャミンには、これからもたくさんの試練がまっているとは思いますが、彼ならきっと乗り越えて、ライオンの中のライオンになってくれると信じてます。

―― 今回の制作で使用したソフトウェアは?

長崎:コンポジット・編集は、Adobe社のAfterEffects。3DCGはAutodesk社の3dsMaxを使用しています。
レンダリングは、ChaosGroup社のV-Ray(http://v-ray.jp/を使用しています。V-Rayは、ベンジャミンの着ぐるみで表現したかった、ふわっとした独特のやわらかい質感がでるので重宝しています。


画像:メイキング用3dsMax内のビュー画像

―― 最後に、tampen.jp読者のみなさんに一言お願いします。

長崎:子供たちをはじめとして、なるべくたくさんの方にみていただきたいです。『獅子として生きるをもし気に入って頂けたら、ZENTOYのWebページ(http://zentoy.jp/alionlife)の"ゼブラ姉さんの相談室"を訪れていただきたいです。またWebサイト(https://suzuri.jp/zentoy)でベンジャミンのトートバッグやマグカップなどのグッズも販売していますので、ベンジャミンたちを側に置いて、更に可愛がっていただけると嬉しいです。
次の作品の企画会議をニコニコ生放送で不定期に放送していますので、本当にお暇でしたら見てみてください。また、LINEスタンプも作成中ですので、そちらも是非。宜しくお願い致します!


―― 7年間かけてようやく完成作品という形となり、その世界を着実に広げつつある『獅子として生きる』プロジェクト。ZENTOYメンバーのみなさんの堅実な積み重ねによる成果だったのですね。全13話構想の1作目ということで、今後の展開とベンジャミンの活躍が楽しみです!(ちなみに、編集は"フェネきちくん"がお気に入りです。これからも出演してくれるといいな・・・

長崎悠さん、ZENTOYのみなさん、どうもありがとうございました!


『獅子として生きる
http://zentoy.jp/alionlife/

ZENTOY
http://zentoy.jp/


オタワ国際アニメーション映画祭2015
Ottawa International Animation Festival / OIAF
https://www.animationfestival.ca/

第10回 札幌国際短編映画祭
10th Sapporo International Short Film Festival and Market
http://sapporoshortfest.jp/15/