映像監督・CGアニメーターの吉野耕平さんが制作したミュージックビデオ『September』が公開されました。
『September』は、アメリカのファンクミュージック・バンド「アース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire)」が1978年に発売したあまりにも有名な楽曲。今回吉野さんが制作したMVの楽曲はそのカバーで、福岡出身・在住のaacoとShinpeiの音楽ユニット「paco」が2014年11月にリリースしたアルバム『パコラボレーション EARTH, WIND & FIRE GREATEST HITS COVER』の中に収録された1曲です。
それでは、公開された『September』MVをご覧ください!
さすが世界中で愛される定番のダンスミュージック、強く刻まれる楽曲のビートと大地全体が揺れ動く映像がマッチして、自然と体が動いてしまいますね。ミルキーな色彩感やポップなキャラクターが現代らしさを感じさせ、新しい世界を構築しています。
吉野耕平さん(Tank-Top所属)は、TVやCM映像を手がけるだけでなく、自主作品も制作している映像監督。手法はアニメーションから実写まで多岐にわたります。現在文化庁の「平成26年度メディア芸術クリエイター育成支援事業」で採択された企画であるアニメーション作品『ブタとサカナ(仮)』も制作中という多忙なアーティストですが、今回は本MVについて、少し解説していただきました。
―― 本作『September』は物語のあるMVなんですね。
吉野: 「アース」「ウインド」「ファイア」の三つの世界に別れた惑星に、ある日天から巨大なレコードが落ちてきて、そこから流れ出した音楽が人々を動かしてやがて世界変えていく・・・というストーリーです。
吉野: もともとの依頼として「pacoの2人がアフロになってダンスをする」という軸があり、それをどう膨らませていくかという方向で企画がスタートしました。CGキャラクターのダンスそれ自体は、ゲームやyoutubeなどで既にいろいろな事がやられていてある意味見慣れてしまっているので、そこからどう違いを出そうか、と考えてたどりついたのが「ストーリー」でした。音楽と踊りの必然性があるストーリーを、ということで。
アース、ウインド&ファイアって、つくづく変わった名前だな・・・と改めて見直していたときに、アースの国、ウインドの国、ファイアの国の三つの世界がつながっていく話をなんとなく思いつきました。結果的には、アース、ウインド&ファイアの惑星で、pacoの2人が冒険を繰り広げるという「カバー曲」の意味合いもある世界になったのかなと思いました。後づけですが。
ラストで三つの世界がつながって虹がかかるのですが、制作中、偶然ラストの虹が途中で消えていくというアクシデントがありました。これは面白かったのでそのまま活かしています。新しい物が飛び込んできてそれまでの古い垣根がガラガラと崩れていくのはある種の爽快感があるのですが、その先に待っているのは単純な幸せだけではなかったりもする気もして。
―― 本作は3DCGのキャラクターアニメーションが軸になっていますね。
吉野: 昔の東映アニメーション映画のような、「シンプルでよく動くキャラクターアニメーション」の世界を今の技術でなんとか表現したいと思いました。いわゆるピクサー的な陰影のある3DCG表現でもなく、手描き2Dアニメーションでもなく、かといって今テレビで進んでいる「セルルックのCGアニメ」とも微妙に違うような、日本ならではな隙間を目指せないかと。
以前はいわゆる2Dアニメーション的なものを作る事が多かったのですが、この2年ほど3DCGのソフトも使うようになりました。3DCGで面白いなと思ったのが、仕上げの幅が広くてフラットな色面世界も割と自由に表現できるということでした。手描きではかなりの修練が必要な微妙なアングルやレンズのパース表現も3Dソフトならすんなり表現できたり、あるいは2Dアニメーションのようなデザイン的で自由な色使いもできたりと。意外に自由度が高いというか、遊べるというか(逆に面倒なことも相当たくさんありますが)。そのあたりを試行錯誤しながら作らせてもらったのがNETWORKS”Ake-Vono”MVや、moumoon”エメラルドの丘”のMVです。
吉野: 今回のMVでは、自分の中ではその辺りの表現をさらに進めています。少しずつCGキャラクターの動かし方にも慣れてきたので、今まで避けてきたキャラクターのアクション等にもトライしてみようかと。
―― 吉野さんは映像分野でとても幅広い活動をされていますね。
吉野: 演出・アニメーターとして、広告やミュージックビデオや短編映画を作ったりしています。実写やアニメーション、あるいはその中間など、仕事によってその都度色々な関わり方をしています。アニメーション作品として『ブタとサカナ(仮)』という短編作品を制作中です。完成は来年の中頃になる予定です。また実写でも『エンドローラーズ』という短編を制作中です(こちらは二月完成予定です)。
【平成26年度メディア芸術クリエイター育成支援事業】
中間面談レポート:吉野耕平 http://creatorikusei.jp/?p=1595
お仕事、自主制作、アニメーション、実写・・・と、とても精力的な上に、表現としても新しいことに挑戦し続けている吉野さん。新作も楽しみです。
『September』MV
使用ソフト:CINEMA4D R15、After Effects CS6、Premiere CS6
吉野耕平
http://ysnlake.com/
Tank-Top
http://tank-top.net/
paco
http://paco-web.jp/
関連記事:
タグ「MV」
http://tampen.jp/tag/184/MV
【トクマルシューゴMVにマクラレン?水江未来+中内友紀恵が織成す”大人の遊び”とは】
http://tampen.jp/article/163
【植草航のダークでスウィートな新作MV公開!カラスは真っ白『fake!fake!』】
http://tampen.jp/article/181
【デコボーカルのポップでコズミックな新作『ハロウシンパシー』制作インタビュー!】
http://tampen.jp/article/284