© 和田淳・ニューディアー/東映アニメーション


ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞をはじめとした数々の受賞歴を誇り、国内外で高く評価されるアニメーション作家・和田淳監督。和田監督が、『ONE PIECE』「プリキュア」シリーズ等で名高い東映アニメーションによるプロデュースのもと、自身初となるオリジナルTVアニメシリーズの制作に挑戦した『いきものさん』は、MBS/TBS系全国28局ネットにて現在放送中。「tampen.jp」では、折り返し地点を過ぎ、放送も後半に入った『いきものさん』について、高田伸治プロデューサー、土居伸彰プロデューサー、和田監督の3名にメールインタビューを実施。その内容を全3回にわたり掲載する。

第1回は、『いきものさん』をプロデュースする東映アニメーションより、高田プロデューサーのインタビューをお届けする。


日本を代表するアニメーションスタジオである東映アニメーションが和田監督のTVシリーズを製作すると発表されたときは、大変おどろきました。あらためまして、本作を東映アニメーションが製作するにいたった経緯をお聞かせください。

高田:東映アニメーションに中途入社し、配属されたのは新企画の立ち上げを目標とした部署で、自分のやりたいことに挑戦できる環境でした。もともとインディペンデントアニメーションに興味をもっていて、過去には『いきものさん』を制作するニューディアーの土居伸彰プロデューサーが主催する上映会やイベントにも参加していました。そうした経緯から、土居プロデューサーに「なにかご一緒できませんか」とご相談したのが、最初のきっかけです。

そこからは『いきものさん』を成立させるために必要な味方を探して奔走した——と言いたいところですが、じつはすんなり進んでいった印象です。ただ、和田監督初のTVシリーズを深夜アニメという枠組みで放送できている現状には、僕自身もおどろいています。

高田プロデューサーは、和田監督作品について、以前はどのような印象をもたれていましたか? また、じっさいにお仕事をご一緒されてみて、和田監督の制作にたいする姿勢など、印象どおりだった部分や、反対に新たな発見などございましたら、お聞かせください。

高田:和田監督の作品には笑いにたいする——ともすると観客の理解が追いつかないほどに——ストイックな美意識が根底にあって、柔らかいルックとのいい意味でのアンバランスさが印象に残っていました。

一緒にお仕事をさせていただいて印象深いのは、やはり和田監督が生みだす映像のヤバさです。少しずつ進捗を共有していただくのですが、そのたびにPCをもって社内を回り、「とにかくこれ見て!」とすすめまくっていました。

じっさいにお会いした和田監督の印象は、物静かで、ちゃんと相手の言葉を受け取るいっぽう、納得できるまでYESは出さないというか、内に秘めたこだわりを感じました。

東映アニメーションが独立系アニメーション作家をプロデュースするのは挑戦であったと推察します。放送も折り返しを過ぎましたが、周囲の反応や手ごたえなど、現時点での率直な心境をお聞かせください。

高田:最初から意識していたのは、独立系アニメーション作家と東映アニメーションが組んだというものめずらしさだけで評価されるのではなく、ちゃんと映像表現として先進的で、なおかつ売れる作品にしなければ、それこそ東映アニメーションが参加する意味がないということでした。その目標に向かって、いまがいったい何合目かはわからないですが、日々、試行錯誤の毎日です。

ありがたいことに周囲の反応もよく、多少の手ごたえは感じつつも、「まだまだ『いきものさん』はこんなもんじゃない」と、土居プロデューサーや和田監督とスクラムを組んでがんばっています。

最後になりますが、今後の放送を楽しみにしている読者へ、メッセージをお願いします。

高田:最終話に向け、どんどんヤバいものができあがってきています。

また、このアニメならではの仕掛けとして、話数ごとに異なるキャストが本編映像にアドリブでアテレコしたものを副音声として放送するという遊び心あふれる試みをしています。そちらもかなりイカした内容になっているので、ぜひ副音声もあわせてお楽しみいただけるとうれしいです(第9話の担当は、『涼宮ハルヒの憂鬱』などで知られる平野綾さんと杉田智和さん!)。

作品として『いきものさん』が成功するよう手を尽くすのはもちろん、それにくわえて和田淳という作家を売れっ子に押し上げることも、プロデューサー一同、目標としているので、そのためにも作品の魅力をちゃんと視聴者に届けていければと考えています。


高田伸治(たかだ・のぶはる)

1992年生まれ。アニメ制作会社を経て、2020年に東映アニメーションへ入社。アシスタントプロデューサーとして『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)を担当。『いきものさん』は自身初のプロデュース作品となる。


【作品情報】

『いきものさん』

〈キャスト〉

いがぐり:誠(ヨネダ2000)

犬:浦井のりひろ(男性ブランコ)

〈スタッフ〉

原作:ゲーム『マイエクササイズ』

監督・脚本:和田淳

色彩設計:尼子実沙

音響監督:滝野ますみ

音楽:高橋宏治

主題歌:猫戦

企画:松原一哲

企画・プロデュース:土居伸彰

プロデューサー:高田伸治、亀井博司

アニメーション制作:ニューディアー

製作:東映アニメーション

【放送情報】

毎週金曜深夜1:50頃 MBS/TBS系全国28局ネット“スーパーアニメイズム”枠おしりにて放送中

【公式サイト】https://www.toei-anim.co.jp/tv/ikimono-san/

【公式Twitter】https://twitter.com/ikimonosan_

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