はじめまして。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻1年次に在籍している、宮嶋龍太郎(みやじまりょうたろう)です。2015年12月26日、27日に石川県金沢市にて開催された「日中韓学生アニメーションフェスティバル2015」に参加しましたので、その様子をお伝えします。
このフェスティバルは、文化庁が日中韓3か国からアニメーションを学ぶ学生や若手監督等を招き、作品上映やシンポジウム等を行うことで青少年の文化交流の促進を目指したものです。私自身も夏に韓国芸術総合学校、中国伝媒大学の学生と机を並べて、10日間あまり共同制作をしたのですが、今回はその成果発表をする機会となりました。
開催前日の12月25日に私を含めた東京藝術大学11人の学生が東京から北陸新幹線で現地に入ったのですが、暖冬ということで、北陸金沢も過ごしやすい気候でした。ホテルでのチェックインを済ませた私達一行は、石川テレビのゆるキャラ「石川さん」に癒されたり、神社参りをしたりと早速金沢を散策。
石川さん
尾山神社
そして金沢に到着して最初に3か国の参加者が顔を合わせたのは、ホテル近くの居酒屋でした。日本海の幸をふんだんに味わい、拙い英語ではありますが3か国の先生や学生と交流を行いました。
韓国の学生からは料理に大根が多い事が話題となったり、日本語で読めないメニューを翻訳したりと打ち解けた雰囲気になって、とても楽しかったです。
翌朝ホテルで食事を済ませ、本フェスティバルの会場、金沢21世紀美術館シアター21に徒歩で向かいました。
途中金沢の歴史あるレンガ造りの建物などがあり、どこか懐かしさを感じていた所へ突然、現代的な円形の建物が現れ、少々びっくりしましたが、よくみてみると景観と調和するように地下を有効活用することによって外観は低く抑えられていたりと、金沢の特色をよく反映した建築でした。
フェスティバルの会場も地下にあり、既に来場者が入り始めていました。会場は広く、座席は使わない時は収納できるように可変式になっているようでした。
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の岡本美津子教授の司会の元、文化庁の方による開会挨拶があり、いよいよフェスティバルが始まりました。
イヤホンによる同時通訳ではなく順番に翻訳される形式でしたので、時間的に3倍かかってしまう点はやや集中力を要しましたが、いざ作品上映が始まると問題無く楽しむことができました。
岡本美津子教授
初日午前の上映と監督トークでは、切り絵が美しい作品『夕化粧』を制作した胡ゆぇんゆぇんさんと、哀愁のあるアニメーション作品『コップの中の子牛』の作者朱彦潼さんお二人から、メイキング秘話など制作の裏舞台を当時の制作映像を交えて詳しく聞くことができました。
胡ゆぇんゆぇんさん(中央)と、朱彦潼さん(右)
午後はチャン・ヒョンユン監督の作品上映とトークでした。
資金集めから始めて制作期間6年の長編作品『ウリビョル1号とまだら牛』を制作した方ですが、その気さくな性格で、苦労話にせず、明るく制作について語っていました。
チャン・ヒョンユン監督
日中韓学生アニメーション国際共同制作2015 (以下 Co-Work)の成果発表会まで時間があったので、美術館の展示作品をみたりしました。展示室をみ終えると外はみぞれが降っていましたが、すぐ天気も持ち直したので近くの兼六園で抹茶をいただいたり、金沢城をめぐりました。
そしていよいよCo-Workの成果発表会です。
各大学の先生方によるシンポジウムの後の発表だったので、それまで待機し、いよいよ出番となりました。
今回は「meet(出会い)」をテーマとして、3か国の学生が日本で集まる前からオンラインで話し合い企画の詳細を決めていきました。その結果、例えば私のチームは電球を擬人化した物語を制作しました。
制作中は連日徹夜になりましたが、途中3か国の学生での鎌倉巡りなどで息抜きをしつつ、何とか完成させることが出来ました。
今回のCo-Workの上映プログラムでは5作品が上映され、それぞれ担当した作品の前で簡単な紹介をしました。
夏に制作してからしばらく経っていたので改めて見返すと、「こんな作品だったんだ」と自分自身新鮮でした。
夜は美術館内のレストランにて東京藝術大学・韓国芸術総合学校・中国電媒大学・中央大学(韓国)・北京電影学院(中国)・金沢美術工芸大学の先生方・学生及びお世話になっている関係者のみなさんが集まり、パーティーが開催されました。
忘れてならないのは、今回のフェスティバルが、舞台裏で多くの学生スタッフによって支えられているという事です。
金沢学院大学や金沢美術工芸大学など、たくさんの金沢の学生の方々ともお話しが出来、とても思い出深い夜となりました。ホテルに帰ってからも夜遅くまで学友と語らい、フェスティバル一日目を終えました。
二日目もホテルから美術館に向かい、昼食の後6大学からの多種多様な学生作品を鑑賞しました。
昼食の様子
同世代とは思えないほど力強い作品が鑑賞出来ました。Zhao Lin監督『Supermarket』(2015)が特に印象に残り、作者とも制作の難しさなどを語り合いました。
そして最も緊張感があったのは学生同士だけで真剣にアニメーションを語らう学生ラウンドテーブル。まず会場レイアウトを自分たちの使いやすいように変更する必要がありました。
ここではお互いの作品について質問し合ったりするのですが、特に藝大生はアナログ手描きの人が多いために、「CGは禁止されているのか?」と質問される事がありました。実際はそのような禁止事項はなく、極めて自由なのですが、国や大学によって傾向は大きく違う部分があるのだなと思いました。なかなか会う機会の少ない者同士が、アニメーションという共通項で繋がるのは楽しく、あっという間に過ぎました。
そしてとても雰囲気のよい流れで打ち上げとなりました。『Supermarket』の監督であるチョウ・リンさんに私の作品を見てもらい、意見を交換し、闊達なやり取りをしました。
チョウ・リンさん(右)と
こうして和やかな雰囲気で打ち上げは終わりました。
翌朝は最後の記念写真を皆撮り合い、バスに乗ってそれぞれ帰国する学生達を見送りました。私達は新幹線が夕方だったので、さらに金沢で行きそびれた近江町市場やひがし茶屋街へ。新幹線に乗るぎりぎりまで金沢を満喫していました。
今回の日中韓学生アニメーションフェスティバルは3か国の文化交流はもちろん、金沢という地域の魅力もあわせて存分に楽しむことができる、とても良い経験でした。帰りの新幹線では美しい山も見られて、最後まで楽しめました。
今後も、このようなアニメーションを通じた文化交流活動の継続が期待されています。多くの方々に、ご興味を持ってご注目いただければと思います!
(写真提供協力:和田健士郎)
宮嶋龍太郎
1989年生まれ。
東京藝術大学映像研究科アニメーション専攻(2017年卒業予定)
http://miyajimaryotaro.com/
学部卒業制作作品『小屋』(2015)
日中韓学生アニメーションフェスティバル2015
http://animation.geidai.ac.jp/jcksaf/
会期: 2015年12月26日(土)、27日(日)
会場: 金沢21世紀美術館 シアター21
(石川県金沢市 広坂1丁目2番1号)
https://www.kanazawa21.jp/
主催: 文化庁、公益財団法人ユニジャパン、東京藝術大学
後援: 金沢市
参加大学: 韓国芸術総合学校、中央大学(韓国)、中国伝媒大学、北京電影学院(中国)、金沢美術工芸大学、東京藝術大学(日本)