トップ画像:第21回文化庁メディア芸術祭公式ロゴ


第21回文化庁メディア芸術祭の受賞作品発表会が、2018年3月16日に東京・六本木の国立新美術館で開催された。日本国内の短編アニメーション作家をフックアップしてきたtampen.jpがとりわけ注目したいのは、折笠良監督『水準原点』(2015年)がアート部門優秀賞を受賞したことだ(ちなみに折笠監督は、環ROY『ことの次第』(2017年)のミュージックビデオがエンターテイメント部門の査委員会推薦作品にも選出されている)。同作は、「世界4大アニメーション映画祭」に数えられるザグレブ国際アニメーション映画祭とオタワ国際アニメーション映画祭で、それぞれゴールデンザグレブ賞(準グランプリ)と実験・抽象アニメーション部門最優秀賞を受賞しているほか、第70回毎日映画コンクールで大藤信郎賞を受賞するなど、国内外のアニメーション・コンペティションで大いに評価されていた。ところが、このたびはアニメーション部門ではなくアート部門での受賞となった。「アート」と「アニメーション」の境界をどこに設定するべきかという問いに、いまだ明瞭な答えは用意されていない。むしろ、デジタル技術が発展・普及した影響で、両者の境界はますますあいまいになっていると言えるだろう。このたび同作がアート部門での受賞となったのは、そうしたアニメーションを巡る状況が少なからず反映されているだろうし、アニメーションの「これから」を考えるうえでも注目に値すると言えよう。『水準原点』は、詩人・石原吉郎の同名詩を原作とした、粘土を使用したストップモーション・アニメーションとなっている。


折笠良『水準原点』(2015年)

アニメーション部門では、日本短編作品は大谷たらふ監督が手がけたyuichi NAGAO『ハルモニア feat. Makoto』(2016年)のミュージックビデオが優秀賞を受賞。色鉛筆や水彩絵具のような温かなタッチ、抽象と具象をメタモルフォーゼしながら往復するアニメーションが、じつに大谷監督らしい傑作となっている。


また、製作国は日本ではないが、日本人のルー・クワハタ桑畑かほる)氏と米国人マックス・ポーター氏のユニットTiny Inventionsが制作した『Negative Space』(2017年)も優秀賞を受賞。同作は、第90回アカデミー賞・短編アニメーション部門にノミネートされたことが日本でも話題となったほか、先日終了した東京アニメアワードフェスティバル2018では短編部門のグランプリを獲得したことも記憶に新しい(関連記事:池袋で東京アニメアワードフェスティバル 2018開催)。

マンガ部門では、久野遥子氏の『甘木唯子のツノと愛』(2017年)が新人賞を受賞。過去に久野氏は、卒制として制作した『Airy Me』(2013年)で、第17回文化庁メディア芸術祭でアニメーション部門新人賞を獲得している。近年、短編アニメーション以外の分野へも活動の幅を広げる久野氏。今後の氏の活躍にも要注目だ。


久野遥子『甘木唯子のツノと愛』(2017年)

なお、贈呈式6月12日受賞作品展6月13日から24日まで国立新美術館で開催される。また、ここで紹介した以外の受賞作品・審査委員会推薦作品は下記の公式HPを参照されたい。 

文化庁メディア芸術祭公式HP http://festival.j-mediaarts.jp